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心の中で後々屠られる可能性の高い毛利探偵に合掌し、
素知らぬ顔して注文の品を持っていく。
「お待たせしました、アイスコーヒーです!」
「あ!ありがとうございます…
何かすみません、こんな内輪の話…」
いたたまれなさと未だ収まらない少しの怒りを滲ませて、
蘭さんは小さくなりながらコーヒーを啜り始める。
「いえいえ!
蘭さんのようにしっかりした奥さんを持って、
新一くんも心強いと思いますよ!」
ニコリと無害な笑みで言葉を発すると、
目の前の高校生2人は飲み物が器官に入ったのか、
「「ゴホゴホッ!!!!」」と盛大に噎せていた。
「あ、安室さん…!」
「はははっ、すみません…思ったことを正直に口にしたまでなんですが…」
新一くんは「ぜってーわざとだろ、」とじとりとした目でこちらを睨んで来たが、気付かないふりをして背を向ける。
お昼時に溜まった洗い物たちを片付けながら、後ろから聞こえてくる微笑ましい会話に、暫く耳を傾けていた。
「そーいや、
オメーらも今日は公園かどっか行くんだろ?
早くしねーと夕方から雨だぞ」
「うん!」
「杯戸町の東公園に行きます!」
へぇ、東公園か…
懐かしいな
小学生の頃よく、ヒロとあそこに行った。
ヒロは低学年のちびっ子にすごく懐かれてて、
「ヒロくん、ヒロくん」って、小さな女の子に追い回されてたっけな
中学に上がってからは部活で忙しくなったのもあって、あまり行かなくなってしまったけれど…
思い出していたら何だかノスタルジックな気分になって、ふっと笑いが零れる。
「サッカーするんだぜ!」
探偵団のひとりが持っていたサッカーボールを得意げに掲げてみせたのか、蘭さんが「あら」と声を上げた。
「サッカーって、3人で?」
確かに、サッカーをする、と言ったら3人じゃ足りない気がしなくもないな。
「おう!」
「ちょっと人は少ないですけど…」
「だな…」
萎みかけた少年たち。
彼らをフォローするように、少女が声を張った。
「で、でもでも!今日は4人かもしれないよ!
サラさん、今日は来てくれるかも!」
「え…!」
ガシャン!!!
新一くんが目を見開いたのと、
俺が手に持っていた皿を落としたのが、多分同時だった。
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作者名:とみーさん | 作成日時:2020年9月4日 2時