面影に立つ (ページ15)

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飲み物とハムサンドを出してからしばらくして
カランカラン、とまたドアベルが鳴る。

「いらっしゃいませ！」

「安室さん、こんにちは！

新一、遅くなってごめんね…って、少年探偵団のみんなも一緒だったのね！」

お待ちかねであろう蘭さんの登場を、少年たちが「蘭さん！」「蘭お姉さん！」「ねーちゃん！」と、元気に声を上げて出迎えた。

「事情聴取してたんだよ！」

少女の言葉に、はぁ！？と名探偵。

…散々いじられて怒っているのかもしれないが、
赤面しているからか、大して怖くない。

「バーロー！あんな圧迫面接ばりのもんを事情聴取とはいわねぇよ！」

「えー、なんか新一拗ねてない？何聞かれたのよー？」

ムスッとする彼の横に苦笑いで着席した蘭さんから、「私にもアイスコーヒーください！」と注文を受けた。

「何でもねーよ…

…で、洗濯物は？」

ここで新一くんが話題の転換に成功したようで、
少年が「洗濯物ですか？」と首をひねる。

「うん、洗濯物をね、干しっぱなしだったの。

だから、きっちりぜーんぶ取り込んできたのよ。」

ニコリといい笑顔を浮かべる蘭さん。

しかし、直後

ゆるゆると小学生に語りかける姿から一転、
一呼吸おいて、般若と化した。

「新一の予想通り、

お父さん、夕方から雨予報だって忘れて
そのまま出かけたみたいでね…

朝、わざわざ『洗濯物取り込んどいてね』って

あーんなに念を押しておいたのに…！！」

「へ、へぇ…」と押され気味の名探偵。

「でも、あの毛利先生ですよ？
もしかしたら、急な依頼が入ったとか…」

助け舟を出そうとしたのだが、どうやら僕は泥で作った舟を差し向けてしまったらしい。

「そうなんですよ…！

私も、急な依頼だったのかもしれないな～って思い直して、

ダメもとで電話してみたら…

平日の真昼間っから競馬場なんて！！

もう、ほんっっっと信じらんない！！！！」

助け舟、撃沈。

いや、毛利先生の場合、
例え不沈と謳われる名船を出したとしても

氷山の一角に激突して…

もしくは、インターハイベスト4の米花高校前・空手部主将に回し蹴りを喰らって大破、沈没あたりが関の山かもしれない。

今にも机ひとつくらい瓦割りしかねない勢いを、横でまあまあと宥める新一くん。

顔に「おっかねぇ…」って、ばっちり書いてあるぞ。