少しでも、長く ページ47
お昼休み。
いつも通り、中庭の人が少ない一角を陣取って2人で弁当を広げる。
『いただきます!
…おおお!今日ちょっと豪華だ!』
嬉々として箸を持つその姿は、いつも通りなはずなのに、どこか覇気がない。
平生の自分を無理になぞっているような、そんな感じ。
そんな彼女を横目に、俺も持ってきた弁当に手をつけた。
もぐもぐと口を動かしながら、そういえば今日はにぃたち来ないのかなぁ。と彼女が呟く。
「さあ…」
まあ、「今日は絶対に来ないでください。昼休みの練習も行けません」とわざわざラインしたのだから、来てもらっちゃ困るのだが。
あまり人が多いとAの本音が聞けないから、仕方ない。
暫くして弁当を食べ終わったAは、昼練行く〜と立ち上がろうとする。
「待って」
そこで彼女の手を引いた。
『なぁに?どうしたの?』
「A、ちょっと話そう?」
『話す?』
首を傾げた彼女。澄んだ瞳が俺を射抜いた。
いつも通りの、綺麗なトパーズの目。
「うん、聞かせてよ。
_Aは何をそんなに焦ってるの?」
途端、彼女の瞳がゆらりと揺れた。
鈍くなった琥珀色の奥に不安の色が渦巻くのが、見えた気がした。
何で知ってるの?誰から聞いたの?
無言ながらに、そう訴えられている気がする。
それでもAの口元はキュッと引き結ばれている。口を開けば出てくるであろう言葉を、誰にも言うまいと心の中に閉じ込めていた。
けれど
「俺にだったら、言えるでしょ?
3年生じゃないから。」
その言葉を聞いた瞬間、彼女はふっと目を閉じた。
そしてすとん、とその場に腰を下ろす。
口を開いて、彼女は観念したかのように声を紡いだ。
『あーあ…何で分かっちゃうかなぁ』
何も言ってないのにね、と自嘲気味に笑う。
それが気に食わなくて、「Aの事なら何でも分かるかも」と冗談めかして言うと、『何それ』と、今度は控えめに、けれどいつものように笑ってくれた。
『私ね、3年生を勝たせてあげたい』
「うん」
『一回でも多く、一本でも長く、先輩達とバレーしたい』
「うん」
『あわよくば、最後の試合は勝って終わって欲しい
…だからね、このままじゃだめなの。
関東2位じゃだめ。全国1位がいい』
彼女がぽつりぽつりと話し始めた気持ち。
_それは、俺が心の底に持つのと全く同じものだった。
”仲間として、後輩として、セッターとして
3年生と、一球でも多く”
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とみーさん(プロフ) - アニメ大好きwomanさん» ありがとうございます!本当に更新お待たせして申し訳ないです(--;) (2019年10月2日 1時) (レス) id: e806159e05 (このIDを非表示/違反報告)
アニメ大好きwoman - とっっても面白いので早く続きが読みたいです! (2019年9月30日 3時) (レス) id: 8b1d0909e8 (このIDを非表示/違反報告)
とみーさん(プロフ) - 鶴まじ天使さん» うわぁぁありがとうございます! (2019年8月31日 0時) (レス) id: e806159e05 (このIDを非表示/違反報告)
鶴まじ天使(プロフ) - ふふっ夢主ちゃんと赤葦のやり取りが見てて微笑ましいですね(笑)すごく微笑ましくて面白いです!これからも更新頑張ってください!応援してます! (2019年8月29日 7時) (レス) id: 2390bd5229 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とみーさん | 作成日時:2019年8月20日 12時