ば(れー)かっぷる日常録【赤葦京治】

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時計は回って1時間後。
ペースの上がったAは、問題数の多い最後の長文で少し行き詰っていたが、
先程最終問題を終えて今は添削中。

シャッシャッと、赤ボールペンが丸を描いたりペケをしたりする音が聞こえてくる。

まる、まる、ぺけ、まる……

『……あれ？』

ボールペンの音が止まる。そのまま考え込むように解答を見つめて一言。

『……くえうえ…？』

いや、まだ引きずってたんかーい

大方また変な和訳文作ったんだろうなぁと思いながらふっと目を閉じると、
ちょっと前から押し寄せてきていた眠気が急に襲ってきた。

Aが終わるまで寝てよっかな……
月バリを閉じて、枕元に置く
ふわぁ、と欠伸が出て、瞼が下がった。




明日、入学式で体育館使うから朝練無いの、今夜寝る前に木兎さんに念押しとかないとな

そういえば母さんと父さん、今日の夕方旅行から帰るって言ってたけど、晩御飯はどうするんだろう
後で聞いとこう……



再開した丸つけの音をBGMに夢の国の入口が見えたところで、カチッとボールペンをしまう音。
目を開ける。
続いて筆記用具をしまって、カバンに放り込む音。


『終わった！あかーし！』

肩につかない白銀の髪
鈴みたいな可愛らしい声
くるりと振り返った大きなトパーズの瞳と目が合った。

『あ、寝てた？』

｢ちょっとね｣

『え〜、寝顔見たかったー！』

｢それは残念｣

一瞬ムッとして、でも次の瞬間には頬を緩ませて『デート〜』とせがむ。

本当、表情がコロコロ変わって見飽きない。

……ああ、もう

｢……可愛すぎ｣

『わっ』

肩を揺さぶってくる手を掴んで引っ張ると、バランスを崩した彼女が俺の上に降ってくる。

そのままギューッとして、耳元で｢今日はお家デート、ね？｣と言うと、
途端、ぶわっと真っ赤になるA。









ああ、彼女が愛しすぎて辛い









”あかーし、近っ”

”聞こえなーい”

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