ば(れー)かっぷる日常録【赤葦京治】

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碧波side

『さく、傘忘れた！』

｢｢｢え｣｣｣

六花、杏莉と3人、見事にハモった。

自主練後、体育館を出ようとしたら能天気な声が背後から聞こえたからだ。

外はザァザァと雨が降っている…傘無しは無理だなぁ、これ。

｢えっと、A先輩…天気予報、見てます？｣

まさかという顔で尋ねる杏莉にドヤ顔で『ない！』と答えるA。

そうだった。
この子、『朝起きて、にぃの髪の毛が暴走してたら雨！』とか宛になんないこと言ってる人だった。

昇降口に着くと『傘入れて〜』と寄ってくるA。
｢はいはい｣と傘の中に入れてやると『ありがとう』と満面の笑み。

…なんて言うのだろう、この何でも許せてしまう感。
本当、母性本能をくすぐるのが上手いというか。光太郎よりはしっかりしてるから忘れがちだけど、こういう所は妹だなって思う。

そんなこんなで校門に来た辺りで男バレ自主練組とばったり。いつものパターンだ。
光太郎たちもだいたい最終下校時間まで自主練してるから。

｢おー！女子だ！お疲れー！｣なんてブンブン手を振る光太郎はしっかりと傘を差している。
まあ、光太郎は天気予報ちゃんと見る人だし。
……め〇ましジャンケンのついでとはいえ。

後ろで赤葦くんがぺこりとしたので、こちらも会釈を返す。

｢ほら、赤葦くんのとこ行ってらっしゃい｣ってAを急かす。
するとこくりと頷いて『あかーし〜』という声と共にあっという間に彼氏くんの元へ。

｢やっぱ傘持ってなかったか｣

『今日は大丈夫だと思った！』

｢土砂降りだけどね｣

うーん…目の前で仲良く話すのを見てると、娘を嫁に出した親の気持ち(？)になるんだよなぁ…
なんて考えているうちに、私はもう1人の元気な幼なじみに捕まった。
関東大会予選の話を延々と聞かされながら帰路を辿る。

ここ何年かは男女共、決勝が梟谷vs井闥山って言うのがほとんど。男子は決勝で井闥山と当たってダメだったらしい。

因みに女子は決勝で井闥山をフルセットで下し優勝。あちらには中学時代のチームメイトがいるから本当に厄介だけど。


話しながら家の近くまで来たところで電車組とはバイバイ。

後ろを歩いていた赤葦くんからAを預かるのだが、ふっと見た時に左肩だけ異様に濡れているものだから驚いた。

ああ、Aが濡れないように傘寄せてくれてたんだな。赤葦くん、なんてイケメンなんだ…









”あかーし、ありがとう！”

”ん、風邪ひかないようにね”

”うん！”

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