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1話 ページ3

「ほら、起きてAちゃん」

「起きてー!」


体を揺すられながら、落ち着いた声と元気の良い声が耳に届いた。


「んん……友奈、東郷?もうそんな時間?」


今日は月曜日だ。憂鬱で仕方ない。
それも相乗効果か知らないが、目は頑なに開くのを拒否していた。


「あぁ、またパソコンつけっぱなしで……昨日も遅くまで起きてたの?」


また、というまで頻度は高くないだろう……多分。


「ふぁ……ぁぁ、おはよ、二人とも」


ようやく目が開き、その場に立つ二人の人影に声をかける。

昨日はパソコンを使っている間に寝落ちしたらしく、キーボードに顔を突っ込んでいた。

おかげで、画面には意味のわからない長文が出来上がっている。


「くぁぁ……腰痛ぇ……」


机と椅子は意外と硬いものだ。腰やら首やらが少し痛む。


「ちゃんとベッドで寝ないから!勇者部五箇条、よく寝てよく食べる!」


友奈に説教されてしまった。

次は気を付けます、と軽く謝りながらパソコンの電源を落とした。
 
 
「あー、友奈は先飯食ってて。着替えたらすぐ行くから」


「はーい!行こ、東郷さん」


元気の良い背中と、それについていく背中を見送ってからパーカーから制服に着替える。

今更だが、僕は結城家に居候している。

二年前起きた大橋の事故で両親が亡くなったとき、僕を引き取ってくれたからだ。

僕はその時、記憶と身体機能の一部を失ったらしい。

色々記憶を巡らせていくうちに、着替えが終わり、リビングに向かっていった。


「おはよー、お母さん」

「おはよう、寝癖ついてるわよ」


クス、と笑いながら指摘され少し恥ずかしくなる。

お母さんもお父さんも、居候の僕を本当の家族のように可愛がってくれていた。


いただきます、と手を合わせてから朝食を食べる。


「それで友奈、人形劇の練習は?」


「ばっちりだよ!それはもう、東郷さんを唸らせるくらい……」


「どうだか……東郷は友奈に甘いからね」


「あら、そんなことないわよ?」


それから何かしら準備をして家を出た。

いつものように友奈は東郷の車椅子を押し、僕は東郷の横を歩く。


……そんな「いつも通り」が、今日崩れるとは思わなかった。

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作者名: | 作成日時:2018年4月16日 15時

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