【H×H】クロロに愛されるだけ【短編集】 (ページ34)

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「数学を担当することになった、クロロ=ルシルフルです。みんなよろしくね」

国がとある宝を隠しているという噂を聞き、好奇心で潜入したこの学校。
見たところ特に変わった様子はなく、平和ぼけした生徒達がいるだけ。

「クロロ先生、私の代わりに美術部の顧問をお願いしますね」

部員は1人ですし、見てるだけです。
あ、でも最後の30分間はゲームなんかして遊ぶといいですよ。

引退するという年配の教師にそう言われ、顧問を任された。
正直面倒だとは思ったが…

「A、時間だよ」

集中して真剣な表情で筆を動かす少女。
技量も大人に劣らず、引き込まれるようなその絵には、念が込められていた。

いいものを見つけたな。

『周りが見えなくなるのは悪い癖なんですけどね』
「俺はすごいと思うんだけどな」

そう言えば少し照れくさそうにする。
この純粋無垢な少女を"可愛い"と思うとは。

しかし、チェスの盤上では侮れない。
Aの駒は的確にこちらのキングの首を取りに来ていた。

『先生って、どうしてこの学校に来たんですか』

ちら、とこちらの様子を伺いながらも聞いてくる。
小動物を彷彿とさせるな…

『この学校に隠されてる宝を探しに来たのかなーって』
「正解」

それがどうかしたかと問えば、世界的に有名な絵画《ノルの瞳》を見に行きたい、と答える。

『チケットくれたら、宝までご案内します』

その言葉に少し驚く。
鍵を開けられるのもAだけ。
嘘をついている様子はない。

少し考え込んで、ふとAは段々涙目になっていくことに気づく。
あ、もう少し黙っておこう。

すると耐えきれなくなったのか、手を合わせて必死にお願いしてきた。

「いいよ」
『いいの!?』
「一緒に行こうか」

泣きそうだったAは目を輝かせ、そして固まった。
表情がころころ変わる。
これは、"愛くるしい"と言ったところか。

＿＿＿＿＿ﾌﾟﾙﾙﾙ…ﾌﾟﾙﾙﾙ…
「シャルか。どうした?」
«あ、団長?実はさ、展示されてる絵画、どうやら本物じゃ無いらしいんだよね»

贋作か。

「あぁ、知ってる」
«知ってる?»
「同行人がそれを見抜いた」
«あぁ、あの団長に春が来たって子?へぇ!すごい鑑定能力じゃない?»

春じゃないと否定する。
それは別として、Aは瞬間的に絵画を見抜いていた。

もう少し能力を見る必要があるが…旅団の役に立つかもしれないな。

«本物はどうやら最上階にあるみたい。警備は大したこと無いよ»
「分かった。後でまた連絡する」