16. お姫様は今、なにしてるかな。 ページ19
ウタをエレジアに置いていくと決まった後、赤髪海賊団はすぐさま国中の宝を船に積み、酒を手に取った。
「せめて笑顔で別れようじゃねェか!!!」
私にはこんな馬鹿で悲しい茶番が出来る気がしなかった。やる気もなかった。
早々に船内に引っ込んで、引き攣った笑い声をあげる野郎共の声を聞いていた。扉の前で蹲り、頬を伝う涙を拭う。
わたしは、無力でちっぽけな存在だ。
「おーい、ウタ!!おまえの冒険話聞いてやるよ!!だから出てこーい!!…あ、A!!」
フーシャ村に着いた船。降りると、ルフィがウタを探していた。
「A、なにかあったのか?ウタはどうしたんだ?」
『…まずは船長の口から聞いてみなよ。私が勝手に船のことを喋るわけにもいかないからさ』
「…わかった」
曇った表情をして口を噤む船員を見て、何かを察しているのだろう、ルフィは素直に頷いた。そして最後に地に足をつけた男を見つけて駆け寄る。
「シャンクス!!なあ、ウタはどうしたんだ…?」
「……ウタはな、」
シャンクスは沈痛な表情を隠して、口元に緩く弧を描いた。
「歌手になるために船を降りた」
「え＿＿」
唖然とした顔で、ルフィはその場に突っ立っていた。
『あー、ほんとサイアク』
「気が立っているな、A」
『そりゃあもう、ヤな船旅だったんでー』
色々と気分が悪すぎた。どう発散しようか迷いながら海を眺めていたら、ベックマンが慰めにきたらしい。
呑むか、と酒を渡されて、私は受け取った。
そしてすっかり酔っぱらいが出来上がった。
『船長を筆頭に辛気臭すぎるわ何だあの海賊。泣くならもっと派手に泣けよばーか!!お通夜かよ』
「ハハ、そう言ってやるな。ああ見えて繊細なんだ、あいつらは」
『メンタルよわよわじゃん。私よりよっぽどお姫様が似合うわ』
「やめてくれ。…やめてくれ」
どうやら野郎共のお姫様姿を思い描いてしまったらしい。頭を抱えてストップをかけた。おもろ。
『今度ガラスの靴でも渡してやろっか』
「冗談は程々にしてくれ、姫さん。0時に靴を忘れていったのはあんただろう?」
『!…んふふ、わたしはお姫様なんて柄じゃないなあ』
全く、伊達に女好きじゃない。流れる動作で手の甲にキスを落とし、キザなセリフを吐く。
カッコよすぎる。
真っ赤になった顔を逸らして、笑って誤魔化した。
私はお姫様なんて柄じゃない。
似合うとしたら、あの天真爛漫で人の目を惹く可愛らしい歌姫だろうな。
17. 正直海広すぎて会えないと思う。→←15. 感謝しろ、借りはいつか返せ。
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睡蓮(プロフ) - なんかもう言葉にできない程に好きです！更新待ってますぅ!! (2022年12月29日 18時) (
レス) id: 4c669c7bad (このIDを非表示/違反報告)
雪見大福(プロフ) - めっちゃ面白かったです！これからも無理せず頑張ってください (2022年12月29日 5時) (レス) @page36 id: 4031fb98ab (このIDを非表示/違反報告)
みーこ★(プロフ) - 更新楽しみに待ってます！ (2022年12月15日 1時) (レス) id: 2a810c9fcc (このIDを非表示/違反報告)
さくにょ(プロフ) - めちゃくちゃ面白くて好きです！更新頑張ってください！ (2022年12月14日 7時) (レス) id: 075aa05b66 (このIDを非表示/違反報告)
あいす・こーひー(プロフ) - めっちゃ好きです！初めて見た時から何回も読み返してました！更新嬉しいです！ありがとうございます！これからも更新頑張ってください！！ (2022年12月13日 23時) (レス) @page36 id: ca65da3012 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナキサ
| 作成日時：2022年12月9日 3時
