0. はじまり ページ2
気付いたら目の前に海があった。
ポカンと口を開けて、その場で立ち尽くす。
あまりのことに、「え」だの「あ」だの意味の無い音が口から零れた。
私が住んでいた場所は海から遠い場所だった、ハズだ。
振り返れば視界に入ってくる町並みに、そもそも日本ではないことを悟った。
低い視点、小さな掌。
私は子供になっていた。
「A、こんな所にいたのか」
さあ帰ろう、と優しく微笑む男の人に、これが私の父親かと頷いた。人は訳の分からない状況に置かれると、やけに冷静になるらしい。
もう一度海を見た。
船が数隻、“MARINE”と書かれた帆を張ってこちらに向かってきていた。
.
.
《『やっほー!!Aだよー』》
町は一夜にして火の海となった。
私の手を握っていた父は、最後まで優しい笑みを浮かべて、その手を離した。
銃を手にした男の人達は、無慈悲に町を燃やしていく。その制服には見覚えがあって、あ、と気付く。
ONEPIECEの世界、だったりする?
そう考えると、船の帆の“MARINE”は間違いなく海軍を表しているし、町の文明レベルが低いことも頷けた。
子供の私は泣きじゃくって、日本人の私が分析する。
一つ確かなことは、町が灰になったと同時に、私はひとりぼっちになったこと。
弱い私が、この危険な世界で生き抜くためにどうすればいいのか？
平和な世界でのうのうと生きていた私に、何が出来る？
空っぽな頭で考えた。
生きるためには愛されればいいのだと。
《『皆、元気ぃ〜??』》
そう尋ねても、返事が返ってくることはない。
電伝虫を通じて全世界に私の声だけが配信されているが、一方通行だ。ハガキはもらってる。
私は仕事の合間に、ラジオのようにてきとーに話をし、気が向いたらてきとーに歌を歌っている。
正直、人気かは分からない。
だが、人気がないなら続けるまでだ。
《『んじゃ、今日も歌っちゃおう!!』》
今の私は歌が死ぬほどうまい。
声がめちゃくちゃ可愛い。
ついでに顔も可愛い。
この“私”なら、やっていける。
聞いている人が幸せになるように、なんて崇高なことは考えない。そんな余裕はない。
人気者になるために。
守られる存在になるために＿＿!!
私はそうして生きるのに必死だった。
だから、“誘惑の歌姫”と呼ばれていたことなど、知る由もなかったのだ。
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睡蓮(プロフ) - なんかもう言葉にできない程に好きです！更新待ってますぅ!! (2022年12月29日 18時) (
レス) id: 4c669c7bad (このIDを非表示/違反報告)
雪見大福(プロフ) - めっちゃ面白かったです！これからも無理せず頑張ってください (2022年12月29日 5時) (レス) @page36 id: 4031fb98ab (このIDを非表示/違反報告)
みーこ★(プロフ) - 更新楽しみに待ってます！ (2022年12月15日 1時) (レス) id: 2a810c9fcc (このIDを非表示/違反報告)
さくにょ(プロフ) - めちゃくちゃ面白くて好きです！更新頑張ってください！ (2022年12月14日 7時) (レス) id: 075aa05b66 (このIDを非表示/違反報告)
あいす・こーひー(プロフ) - めっちゃ好きです！初めて見た時から何回も読み返してました！更新嬉しいです！ありがとうございます！これからも更新頑張ってください！！ (2022年12月13日 23時) (レス) @page36 id: ca65da3012 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナキサ
| 作成日時：2022年12月9日 3時
