検索窓
今日:2 hit、昨日:26 hit、合計:51,675 hit

ページ9

夏が近づいてきた7月。

「む、猫か!」

道中二匹の猫がいた。

俺は毎日電車で通勤している。車で通うのもいいが、駅から学校へ歩く道を見るのが好きな為敢えてこの選択をした。

まだ早いんで生徒の数は少ない。朝練に向かう生徒がまばらにいる程度だ。
生徒達は俺に気付いて元気に挨拶をする。挨拶は大切だからな!感心感心!

歩いていく途中、猫を見つける。
俺の髪にそっくりな毛色をした猫がいた。
うむ、見れば見るほど同じ色だ。煉獄家の血を引いているのやもしれん。

もう一匹の猫を見ると、くわっと欠伸をしている。眩しそうに太陽を見て、くるりとくるまってまた寝始めた。

「はは、朝が苦手か!君はAに似ているな!」

夜の呼吸の使い手であったAは、その呼吸に恥じぬほど夜を好んでいた。

代わりに朝は苦手で、隊士になる前の彼女に稽古をつけていた時期は朝起こすのが大変だったと思い出す。
“起きろ”、“やだ”の繰り返しだ。
普段礼儀正しいAの駄々をこねる様は可愛らしかったが、同時に困ったものだった。

“あと五時間…”という台詞もよく聞いた。長過ぎる。

嫁入り前の娘が寝ている部屋に男である自分が入るのは躊躇われたが、いつまでも起きてこないんで仕方なく起こしていた。仕方なく、だ。

はだけた肌になんとも言えぬ気持ちになったが。あの時は自分が未熟だからと精神統一して気持ちを落ち着かせていた。
今思うと彼女は無防備すぎる。鬼への警戒心は強くても男への警戒心がまるでない。

少々世間知らずなところもあったし、箱入り娘だったのだろうか。しかし両親には追い出されたと言っていたな…不思議なものだ。
どちらかというと、この時代の人間に近い気がする。平和な世界で生きてきた様な子だった。

どう見ても怪しい男でも困っていると言わればすぐについていく。俺も胡蝶もよく説教していた。

「今頃、彼女は何をしているだろう…」

…いや、今はおそらくまだ寝ているな。
しかし元気でやっているだろうか。妙なことに巻き込まれていないといいが…。
どこかで元気にしていればそれでいい。彼女が苦しむのが一番嫌だ。

欲を言えば早く会いたいがな!
彼女の笑顔が早く見たい。声も聞きたい。現代の日本は美味い物もたくさんある。共に食事をしたい。
洒落たカフェもある。デートの約束はまだ果たせていないから、絶対に行こう。


だから、早く姿を見せてくれ…。
このまま会えないのかと、不安で仕方がないんだ。

九→←七



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (190 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
939人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

ナキサ(プロフ) - 飛鳥さん» こちらこそ読んでくださりありがとうございました! (2021年11月22日 19時) (レス) id: 9d3d6315a8 (このIDを非表示/違反報告)
飛鳥 - ものすごい大作に出会ってしまいました……ありがとうございますありがとうございます… (2021年11月22日 9時) (レス) id: d3040dc27e (このIDを非表示/違反報告)
ナキサ(プロフ) - あまねさん» 読んでくださりありがとうございます!楽しんで頂けたようでとても嬉しいです。 (2021年11月15日 23時) (レス) id: 9d3d6315a8 (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - 最初から最後まで一気読みしちゃった笑、、、待ってなんでこの神作に早く出会わなかったの?私バカなの?((((喧しいわ (2021年11月14日 9時) (レス) @page23 id: 1a6dd63888 (このIDを非表示/違反報告)
ナキサ(プロフ) - meruriさん» コメントありがとうございます!感動していただけれ嬉しいです (2021年10月28日 22時) (レス) id: 9d3d6315a8 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ナキサ | 作成日時:2021年3月5日 14時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。