【煉獄杏寿郎】全力で救いたい！【トリップ】現代・番外編

煉獄杏寿郎の弱点 ページ20

朝が苦手だ。
いや、正確には苦手に“なった”。

日が昇るか昇らないかくらいの時間。
日が昇ったばかりの時間。

…Aが消えてしまった、そんな時間が苦手だ。

昔から早起きは得意で朝は好きだった。鬼狩りであった頃は寧ろ安堵さえ感じていた朝日が、恐ろしくてたまらなくなった。

現代ではカーテンで窓が遮られているため良いものの、大正に生きていた頃は早く目が覚めてしまうと隠れるように布団に籠っていた記憶がある。もしくは日光の射さない場所へと逃げていた。
…我ながら、鬼にでもなった気分だった。

「まだ、見れそうにないな」

時刻は五時過ぎを示している。カーテンを開けて外を見ることは出来そうにない。日が高く昇ってしまえばいいんだが。

少々早く起きてしまったようだ。しかし再度眠れる気はしない。今寝てしまうと悪夢を見そうだ。
授業の内容の確認をしておこうとプリントを取り出す。

「っはー…」

深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。

朝への苦手意識は、Aと再会して以降も続いていた。寧ろ再会後の方が酷くなったかもしれない。彼女の姿を見てしまった分、また消えてしまうように感じたためだった。

早く時間が過ぎてくれと祈る。
Aに会いたい。彼女の姿を見るまで安心できない。また消えてやしないか心配で仕方ない。

塵のようになった彼女が風と共に消えていくのを見るのはもう二度と御免だ。

「…A」

これが所謂トラウマというやつだろうか。
情けない。不甲斐ないことこの上ない。

彼女には見せられない、と思った。
こんな、俺の弱さなど。

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