【煉獄杏寿郎】全力で救いたい！【トリップ】弐

玖拾壱 ページ44

時透くんと義勇さんはずっと動き回っている。隠達が手当ができないと困っていた。
炭治郎を探しているんだ。

炭治郎は…ああ、いた。

『炭治郎くん』

折れた刀を握り、正座の姿勢のままうずくまっている。
声を掛けても返事がない。
そもそも、息をしてない。脈がない。

義勇さんも時透くんも気付いて駆け寄った。
2人は俯き、隠達は泣いていた。

…変えられなかった。
きっと、炭治郎は鬼化してしまう。

その証拠に、ほら。
今、ピクリと小さく動いた。

正座の姿勢でうずくまっていた炭治郎。
右半分を覆っていた怪我がみるみる消えていき、ゆっくり目を開けた。

鬼の目を、していた。

『皆下がれ！！』

その言葉に、義勇さんと時透くんは状況を理解し、隠を抱えて下がる。

「動ける者は武器を取って集まれ！！」

義勇さんが大きな声で叫ぶ。

「炭治郎が鬼にされた！太陽の下に固定して焼き殺す！
人を殺す前に炭治郎を殺せ！！」

日陰に入ろうとする炭治郎をどうにか止める。

「！陽光灼けが…！！」

太陽の光ではもう死なない。炭治郎は克服してしまった。

満身創痍の中、伊之助も善逸も柱達も、刀を握ってどうにか足止めをする。

太陽が効かない。
首を斬ったって死なない。

鬼になった炭治郎を殺す手段は無い。

「お兄ちゃん！！負けないで、鬼になんてなっちゃだめ…！！」

人間に戻り、駆け付けた禰豆子。
必死に声を掛けても、炭治郎に全く届いていない。

そこに、フラフラになったカナヲちゃんが歩いていく。…だめだ、この子は既に片目の視力を失っている。また彼岸朱眼を使えば両目が見えなくなる。

ならば。

『カナヲちゃん、それは私がやります』
「！Aさん…」
『まだ体力は残ってるから、平気だよ』

半ばひったくるような形で、薬を受け取った。
藤の花で作った鬼を人間に戻す薬。しのぶさんが作ったものだったはず。

『夜の呼吸 終ノ型＿＿終焉なき夜想曲』

体温の熱すべて、今度は目のみに集中させた。
失敗は出来ない。全てを、見て。

こちらに伸びる攻撃を躱し、炭治郎の背中へと刺した。

『…っ』

刺した瞬間、くらりと体が揺れる。
負担が大き過ぎたか。目がえぐいくらい痛い。
倒れそうになったところを、誰かに助けられた。

『れん、ごくさん』
「少し休んでいてくれ、今の君では危険だ」
『…はい』

原作と違って、今は柱が全員いる。
勿論万全な状態ではないが…少しだけ、私が抜けても大丈夫なはずだ。

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