【煉獄杏寿郎】全力で救いたい！【トリップ】弐

捌拾捌 ページ41

赫刀にしてないの私だけだ。
このままでは無惨に斬撃を与えても一瞬で再生されてしまう。一瞬の隙を与える為にも、絶対に赫刀にしなければ…。

どうしよう、どうしようと悩んでいると、ふと刀を握る私の手の上に、何かの力が加わっている感覚がした。

＿＿＿ごめんねA、私のせいで。

『え、』

耳元でそう、女性の声が聞こえた。
聞いたことのないはずの声、しかしどこか懐かしくて。
何故だろうか、直感的に沙夜さんのものだと思った。

ああ、近くにいるんだ。
姿は見えないけれど、きっと、私の味方になってくれている。

『ぐっ』

力を入れて、刀を赤く染め上げていく。
沙夜さんの力のお陰で、まだ動く余裕を残したまま赫刀にできた。

早く皆の援護に向かわなければ…。








.








『あ、れ…』

こっちの腕がない。
意識が朦朧として、視界も悪い。

けれど、かろうじて見えた。
柱達の倒れている姿が。
パッと見ても、皆手足を欠損するような大怪我だ。

あ、カナヲちゃんが危ない。
助けなければ。早く、助けを。
動け、動け、私の体。動け。動いて。
なんで動かないの。
ああダメだ、やめて。

「ヒノカミ神楽 輝輝恩光」

燃えるような一撃が、視界に写った。









.









＿＿＿A、ごめんね。
私のせいで貴方をこんな戦いに巻き込んでしまった。

私があの男に捕まったせいで。
私があの男に鬼にされたせいで。
私があの男から逃げたせいで。

貴方には鬼の血が混じっている。
段々薄くなって消えたはずの鬼の血、遺伝子。
貴方は先祖帰りでそれを受け継いでしまった。

貴方は、きっと…。









『いいんだよ、沙夜さん』

覚悟はとっくのとうにできてるよ。

捌拾玖→←捌拾漆

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す