漆拾参 ページ26
『獪岳くんはあちらへ。こっちは私が相手をします』
「…ふん」
なんでこんな奴に指図されなきゃいけねぇ、みたいな態度ながら、一応命令は聞いてくれた。
さて、彼はあの鬼を倒せるだろうか。
パッと見た実力からすると、彼だと苦戦しそうなレベルの鬼だ。
「ひひ、いいのかよそ見なんかして…あ?」
『…うーん、獪岳くんって…』
「い、いつの間に、俺の、くび、」
やっぱり、良くも悪くも感性が一般人なのかも。
命の危険を感じたらすぐに逃げる。
いや、それで正しいんだ普通は。
実際撤退も戦略だし。
『夜の呼吸 壱ノ型__寂静の零時』
「はっ?」
一通り分析し終わったので、助けに入った。
これでも柱だ、上弦じゃない鬼の頸はもう一瞬で落とせる。
『怪我はありませんか』
「っねぇよ」
獪岳は悔しそうに唇を噛む。
「てめぇ、俺を試してただろ」
『そうですね』
「んで?柱様はどうお思いになったわけだ?」
心底腹が立つ、と言ったように、苛立ちを顕にしている。
『このままじゃいけないなぁと』
「あぁ?俺が弱いからか!俺が壱ノ型を使えねぇからか!」
『いいえ。違うんです。
貴方は強いですよ。剣技では』
そう、決して彼が弱い訳では無い。寧ろ階級も上だし才能がある。
しかし今回の鬼とは相性が悪く、それこそ多少の怪我を承知で挑むべきだった。
今彼がしたことといえば、他の隊士を見捨て逃げようとしたことである。
『貴方、他の隊士を見捨てようとしたでしょう』
「何か悪いか」
『いいえ。ただ理由を伺っても?』
「んなもん、生き残りたいからに決まってんだろ!」
生き残ればいつか勝てんだよ!と言った。
なるほど。間違いではない。
生き残りさえすれば、いくらでも取り戻すチャンスはくる。
だけど、なあ。
少し厳しいことを言うようだけど。
『それで、いつ勝つんです?』
「ッ!」
攻めなきゃって時まで逃げているから、いつまでも勝てない。
『このままではダメだと言ったのは、壱ノ型を使えないからではありません』
「嘘つけ、心では馬鹿にしてんだろ!」
『あ、それですよ、それ』
はっきり言おう、誰も彼も視野が狭い。
壱ノ型が使える使えないなど些細な問題なのだ。鬼を殺せるならなんでもいい。
逆に言えば、型を全部使えたとしても鬼を殺せなければ意味が無い。
その点では獪岳はうまくやれているのに。
周りの環境に恵まれなかったのもあるなぁ。
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Haruka(プロフ) - 煉獄さん推しなのでとても感動しました。 (2021年9月10日 22時) (レス) id: c2932dcf70 (このIDを非表示/違反報告)
ナキサ(プロフ) - 蓬莱寺さん» ありがとうございます!!更新頑張ります!! (2021年1月12日 23時) (レス) id: 9d3d6315a8 (このIDを非表示/違反報告)
ナキサ(プロフ) - すみっコぐらし好きの隅華(仮)さん» すみません、中々時間が取れなくて…!!続きを待ってくれているのはとても嬉しいです、ありがとうございます! (2021年1月12日 23時) (レス) id: 9d3d6315a8 (このIDを非表示/違反報告)
蓬莱寺(プロフ) - 続き気になります。更新楽しみにしてます (2021年1月12日 8時) (レス) id: de353d3df7 (このIDを非表示/違反報告)
すみっコぐらし好きの隅華(仮) - 早く更新して下さい!お願いします!m(_ _)m (2021年1月6日 20時) (レス) id: d6919b39a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ナキサ | 作成日時:2020年12月19日 2時