零 ページ50
ピピピ…ピピピ…、カチッ。
『…ゆめ』
目覚ましの音、なんだか久しぶりな気がする。
長い長い夢を見ていた。
鬼滅のキャラと、共に戦う夢。
鬼滅を見過ぎで影響されたかな。
自分の顔に触れると、手が濡れた。
泣いちゃった？夢で泣くの、意外と初めてかも。
なんだか恥ずかしいなと思って、両手で顔を覆い、はーっと深く息を吐いた。
それに違和感を得た。
『腕が、ある？』
目も見える。濡れたっていう感触もあった。
…当たり前か。何を言ってるんだろう。
でも不思議だ。無くなったものが復活した、みたいな。
試しにぐるぐる肩も回してみる。うん、普通だ。
『ねぇ、カラちゃん』
今日の任務は何、と聞こうとして、止めた。
本当に私、どうしちゃったんだろう。
“カラちゃん”なんて何の捻りもない、相棒のカラスの名前。
夢の中で毎朝呼びかけていたと思う。
喋るカラスなんて現実にはいないのに。
ぱっと部屋を見渡した。
いつもと変わらないはずなのに、全て懐かしい。
『…？制服、汚れちゃってる』
壁にハンガーでかけられた制服は、泥がついて破れている。
何故だろう、そこまで私やんちゃじゃないんだけど…。
そこまで考えて、ふと思い至る。
＿＿初めに森で鬼に襲われた時の？
『い、や、いや…』
あれは夢だ。
夢なんだから、有り得ない。でも汚れたのはそれくらいしか思い至らない。
えぇい、考えたって仕方が無い。
さっさと学校の用意をしなければ。
パジャマを脱いで、制服に袖を通す。これも久しぶりだ。…じゃなくて！
なんだろうこの、奥歯に何か詰まったような。
『ん？』
ポケットに触れると、硬い感触があった。
何かを入れた覚えはない。なんだろう。
不思議に思って、ポケットに手を突っ込んだ。
二つあるようだ。少し尖っている？チクチクと指を刺した。ますます分からない。
手の感触だけでは思い当たらないので、取り出す。
『…こ、れは』
ひゅ、と喉が鳴る。
見覚えのあるものだった。
櫛と、簪。
『ぁ、あぁ…』
夢じゃなかった。
夢なんかじゃなかった。
あれは紛れもない現実で、あの場にいたのはキャラなんかじゃない。皆、共に言葉を交わし、共に励まし合った、存在する人だった。
手のひらに乗った、彼の色をした私の大切なもの。
ぎゅっと抱き締めて蹲った。
“A、俺は君の事が好きだ！”
真っ直ぐ私を見る目を、鮮明に思い出せる。
『杏寿郎さん…』
もう私の名前を呼ぶ声を、聞けなくなってしまった。
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Haruka(プロフ) - 煉獄さん推しなのでとても感動しました。 (2021年9月10日 22時) (
レス) id: c2932dcf70 (このIDを非表示/違反報告)
ナキサ(プロフ) - 蓬莱寺さん» ありがとうございます！！更新頑張ります！！ (2021年1月12日 23時) (レス) id: 9d3d6315a8 (このIDを非表示/違反報告)
ナキサ(プロフ) - すみっコぐらし好きの隅華(仮)さん» すみません、中々時間が取れなくて…！！続きを待ってくれているのはとても嬉しいです、ありがとうございます！ (2021年1月12日 23時) (レス) id: 9d3d6315a8 (このIDを非表示/違反報告)
蓬莱寺(プロフ) - 続き気になります。更新楽しみにしてます (2021年1月12日 8時) (レス) id: de353d3df7 (このIDを非表示/違反報告)
すみっコぐらし好きの隅華(仮) - 早く更新して下さい！お願いします！m(_ _)m (2021年1月6日 20時) (レス) id: d6919b39a4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ナキサ
| 作成日時：2020年12月19日 2時
