【煉獄杏寿郎】全力で救いたい！【トリップ】弐

捌拾肆 ページ37

時透くん、私、玄弥くん、不死川さん、悲鳴嶼さん。

5人で今戦い続けている。

黒死牟の技は攻撃の形が変則的で歪だ。
長い経験で培った感覚で無いと避けるのは困難。

時透くんも強いが、そういった意味では苦戦していた。

…いや、苦戦しているのは全員だ。
全員傷だらけ。
不死川さんの稀血で多少黒死牟の動きは鈍ったが、それでも速い。

はやく、わたしが倒さねば。
悲鳴嶼さんが痣を出す前に。

風の呼吸 漆ノ型＿＿頸風・天狗風

岩の呼吸 壱ノ型＿＿蛇紋岩・双極

夜の呼吸 肆ノ型＿＿夜嵐の狼

三人の攻撃が黒死牟の着物を裂く。
ダメだ、攻撃が届いていない。

それに、なんだ。攻撃が来る気がする…！

その勘は当たり、ノーモーションで繰り出される攻撃が私達を襲う。

必死に前に出て捌く。
夜凪とも言えない拙いものだが、なんとか皆は守れた。

少しでも遅ければ致命傷だった。

「着物を裂かれた程度では、赤子でも死なぬ…」

黒死牟の刀がさらに歪な形へと変化していた。
先程よりも尋常じゃないスピード、読めない斬撃の動き。

「くっ」

間合いに入って動きを止めようとする時透くんと銃を放つ玄弥くん。

隙ができた。
4人で同時攻撃をする。

「月の呼吸 拾肆ノ型 兇変・天満繊月」

しかしそれを悟った黒死牟が広範囲の大技を繰り出した。

その技の隙間、攻撃の隙間を躱すことだけを考える。

悲鳴嶼さんはその隙間に鎖を振りかざし、数珠を投げ黒死牟の視界をくぐり、手の甲にぶつける。

不死川さんも、その隙に”塵旋風・削ぎ”で動きを止め、悲鳴嶼さんの鉄球が黒死牟の身体に当たり半壊する。

そして一番小柄な時透くんと私は間合いに入った。

時透くんは体に一突きを入れる。

「月の呼吸…。…！？」

その瞬間、銃弾が黒死牟に炸裂した。玄弥だ。

黒死牟の動きが止まる。
今だ。

私は頸へと刃を振った。

『っ、いけっ…！』

いける。
そう思った時だった。

ゾワッと体が震え上がった。
私は考える前に刀を頸から離し、構える。

多少の無理は承知でいかなければ、時透くんと玄弥くんは助けられない。

ガッと体の熱をさらに上げ、目、手足に集中させる。

全てが遅く見える。
黒死牟が無数の刃を放とうとしている姿がゆっくり、ゆっくり見えていた。

対して私の体は軽く、速く動く。

これならば。

『夜の呼吸 終ノ型＿＿終焉なき夜想曲』

全ての刃が、まるで夜に吸い込まれるように、消えていった。

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