戻りたければ手を汚せ―同田貫清国編― (ページ4)

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男士高本丸の同田貫清国―彼が存在する所以― ページ4

自分の名字は自分でも珍しいと思っていた。
しかし、同じ「同田貫」の名がつく刀があるとは思わなかった。
中学の剣道の後輩で、高校の日本史研究同好会の近所の子が教えてくれた“同田貫正国”という刀。
１８歳の１１月、受験生として必死に勉強していないといけない時期だったが、息抜きという名目で親に我儘を聞いてもらった。
…まぁ、親は仕事で普段は家にいないのだ。その分の我儘は聞いてもらっても罪は無いだろう。

そんなこんなで、九州の歴史博物館に訪れた。
平日だからか人はあまり居ない。
それどころか、スタッフも見かけない。受付の人もさっきは居たのに、今は見当たらない。
親は、１６時に迎えに来るそうで勿論居ない。

展示された刀の前に立つ。
“同田貫正国”…。天覧兜割で唯一成功した刀、と後輩から聞いている。その後輩は何者かに殺されているが。

「………強そうだな。」

思わず口に出る。
そうとしか言えないのだから仕方がない。
全てを斬る……実戦刀と呼ばれる刀だから、断つ事ができそうな刀。
男子だから、そんな感想しか出てこないのも事実だが。

「…なァ。」
「ひゃいッ！？」

後ろから声をかけられ、ひっくり返った声が出る。
ぎこちなく振り向くと、そこには一人の男子。
１７０センチもない身長と、半月みたいな三角の目、顔に大きくついた傷。
黒のタンクトップから見える筋肉は、男でも「おぉ…。」と言わざるをえない。

「これ、あんたのだろ？」

そう言って見せるのは自分の生徒手帳。
わざわざ写真の方を見せてくる。少し恥ずかしい。

「えっ……うん、俺の。」
「落ちてた。」
「そっか…ありがとう。」

生徒手帳を受け取ると、ランニングポーチにしまう。
その様子を男子はじっと見ている。

「俺になんか変な所あった？」
「…いや、別に。」

Aは少し考えたあと、思いつく。

「この刀が見たいのか？俺、邪魔してた？」
「それも違う」。

即答だった。
Aがうんうん悩んでいる所を見ていた男子の口元が緩み。

「兄貴に似てるから。」

と答えた。