戻りたければ手を汚せ―同田貫清国編― (ページ29)

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男子高本丸の同田貫清国―看病―　④ ページ29

「何を作ればいいのか…。」

手を洗って、包丁とまな板を用意したものの。何を作るか悩む。

「『大倶利伽羅さん、何を作る予定でしたか？』」
「…炒飯とかき玉子の汁。
　れしぴが分からないなら、教えようか。」
「『大丈夫ですよ。なので、動かないでください。』」

裾を踏まないように立ち上がろうとするのを止める。
Aは炊飯器(×６)を開け、米が炊けている事を確認すると、次に冷蔵庫を開け、ハムを取り出す。冷凍庫から刻まれたネギを取り出す。
大きな中華鍋を置き、熱する。
ハムを小さく切って、小皿によける。
米を大きなボウルに盛り、中華鍋にインする。適度に炒めると、ハムとネギも混ぜていく。
そして、塩と胡椒で味付けをすると大皿に盛る。
炒飯が完成し、一息つく。

「手際が良いな。」
「！？」

いつの間にか大倶利伽羅がAの隣に居た。
清国は完全に油断して、Aに全部任せてしまった。

「う……うぁ……。」
「どうした？そんなに驚かせてしまったか。
　……そんなつもりは無かったのだが。」

混乱して人語を発せない。
果たしてAは話して良いのだろうか。そんな葛藤がAから言葉を奪う。

「…清国？」
「っひゃい！な、ななななんですかかかか…！」
「大丈夫か？少し落ちつけ。」
「ちゃんと落ちついてますよよよよ―――。」
「全然落ちついてないじゃないか！」

Aの狼狽があまりにもひどかったのか、大倶利伽羅の表情が困惑に変わっていく。
清国はAの魂を少しずつ引きずって、入れ替わる。
何度か呼吸して、冷静になるフリをする。

「『大丈夫ですよ、ほら。落ち着きました。』」
「それなら、良い。
　…悪かったな、驚かせて。」
「『いえ、私が混乱してしまったのが悪いのです。
　お気になさらず。』」
「……悪かった。
　何か手伝う。俺に出来ることはあるか？」
「『そうですね…皿を出していただけますか？』」
「皿…。」

皿の置かれた棚は、それなりに高い。
普段の大倶利伽羅でも少し爪先立ちしないといけないくらいに。

「『届く距離で大丈夫ですから。』」
「あぁ…。」