戻りたければ手を汚せ―同田貫清国編― (ページ23)

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男士高本丸の同田貫清国―出陣―　④ ページ23

阿津樫山の敵を殲滅し、本丸に帰還した。
気絶していた清国は本丸に戻ってすぐに復活した。
清国は軽傷だったので、手入れはあっという間に終わった。

そして、自室に戻り一度体を休めようとする。
しようと、した。

「……よォ、遅かったな。」

分霊よりもずっと重装備で、神気を帯びた同田貫正国。
つまりは本霊。本霊が部屋の壁に凭れて座っている。

「『正国、どうした？わざわざ神域から出て。』」
「……Aを出せ。」
「『嫌がっているのにか？』」
「そうだ。」
「『…正国、Aは頑張っていたのだ。
　私の誇りを傷つけないように、膝をついてでも泣かないように、戦えるように。』」
「………。」
「『それに、私はお前の兄だ。
　 Aはともかく、私はお前の指図を受ける気は無いぞ。』」
「…なんだよ、何が言いたいんだよ。」
「『素直に、心配したと言えば良いだろう。』」
「………………………心配なんかしてねェし。」
「『私は知っているぞ。
　武器でもないAが戦えるのか心配して、そわそわしてい――――』」
「してねェし！してねェからな！！」

纏った真面目オーラは一気に蒸発し、兄にいじられ、ムキになる弟と化している。

「さっさとA出せよ！言う事言ったら帰るからよォ！！」
「『仕方がない…。』」

清国がAの魂を引っ張り上げる。

「なんですか…本霊さん。」

引きつった表情で問う。

「…初陣にしちゃ、上出来なんじゃねェの？
　兄貴の誇りに傷をつけるような真似は許さねェからな。」
「………え？」

てっきり、動けずにボコボコにされたことに対して何か言われるのかと思った。
だが、棘はあるが褒めてくれた。

「なんだよ。」
「い、いえ別に…。」
「照れてんじゃねェよ。」
「ごめんなさい。」
「………次、戦場で呆けてみろ。
　容赦なく神域に引っ張るからな。」

そう言って、本霊は神域へと消えた。

「『正国はAを心配しているんですよ。
　口は悪いですが、良い子なんですよ。』」

再び、Aの魂が清国によって沈んでいく。
清国が申し訳なさそうに言う。

「分かってます。
　大丈夫ですよ、気にしてないので。」
「『………………。』」