戻りたければ手を汚せ―同田貫清国編― (ページ22)

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男士高本丸の同田貫清国―出陣―　③ ページ22

痛みに耐えながら、ふらふらと立ち上がる。
勿論本体は握って、来る攻撃に備える。
でも、真正面の打刀はただ呆れたような表情でAを見るだけ。(勿論本体は握っている)

「流石は兄貴だな。
　動いてる奴は違っても、武器として動けるようになってんだからよォ。」
「……君の、おにい…ちゃんだから……当然…だ、よ。」
「ただの人間が刀剣男士(俺達)と同じ事するのが？」
「…そうだよ。」

息をするだけで、泣きそうになる。
でも、負けてはいけない。自分の為。日本史の為。

「それに、俺にはやるべき事がある。」
「なんだよ。」
「俺は、俺を取り戻さなきゃいけない。
　…俺の時間を。」
「俺が殺したから？」

Aは静かに頷く。
打刀は聞こえないように小さく、「一緒に居たかっただけなのに。」と呟く。
確かに、Aの心臓を貫いて体をぶち抜いた時。言葉にできないくらいのゾクゾクとした快感が来た。
そして、２０１６年１月１０日のAのまま一緒に居られると思ったのに。

「俺は兄貴と一緒に居たかった…だけなのに。」
「一緒に居る事は出来ないよ。
　……俺はもう、同田貫清国なんだから。」

刀剣男士―――薙刀・同田貫清国。
この打刀の敵。
知ってる。知ってるけど、諦めきれない。

「俺は諦めない。
　絶対に、絶対だ。」

打刀の瘴気が一層濃くなる。
悲しそうな表情は一転、挑戦的な表情に。

「今日は帰る。
　興ざめしたし、何より一人で６人の相手できねェからな。」

既に打刀以外は倒され、他の５振りも打刀を倒そうとする。

「待ってろよ。
　――――……同田貫A！」

そのまま、森の方へ走って消えていった。
Aは安心すると、その場に座り込む。
かなり足が震えていた。多分気付かれている。怖かったのだから。

「…………本霊さんに怒られる…。」

清国として動いてる分際のくせに恐怖で足を震わせていたのだから。
それに、自分のトラウマで動けなかったせいで清国を気絶させてしまったのだから。
生きている事より、本霊の正国になんて言われるかでビクビクしてしまった。