男士高本丸の同田貫清国―顕現― �� ページ3
「『…正国が信じられない事は承知している。
一介の分霊が本霊を呼ぶ事はできない……と、本霊の正国に言ったからね。』」
「あァ。」
「『でも、私はここに居る。』」
「あァ。」
「『知りたいかい？理由を。』」
正国は頷く。
「『今日からここでお世話になるのだ。主さんにもしっかり説明しないといけないね。
……主さんも知りたいでしょう？』」
主も頷く。
「『では、移動しましょう。
立ち話はよくないですから。どこか、座れる部屋で。』」
清国がほほ笑みながら言う。
正国は清国の腕を掴んで、主に言う。
「あんた、俺は一度兄貴を部屋に連れてく。
多分、俺の部屋に兄貴の内番服があるだろうし、俺が手伝う。」
「分かった。
…じゃあ、着替え終わったら大広間に連れてって。」
「おう。」
短く返事すると、清国の腕を引っ張って歩き出す。
清国は「やれやれ」と小さく呟きながら歩く。
――――
―――。
「『……正国。少し緩めてくれないかい。
もう、どこにも行かないし、消えないよ。』」
「…………。」
正国は反応しない。
清国は困った顔をする。
「『正国。
私は、ここに居る。お前の後ろを歩いている。だから、逃げさせないように掴むのは…―――。』」
「分かってる。
んなこと、分かってんだ。」
立ち止り半月の目が、ギロリと清国を睨む。思わず、すくんでしまう。
「…………弟の小さな我儘くらい聞いてくれよ。」
拗ねたように言うと、また歩き出す。
清国は仕方なしと諦め。顕現に至るまでを思い出していた。
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