男士高本丸の同田貫清国―内番― �� ページ14
昼餉の時間になり、道場で手合わせ中の同田貫兄弟を呼びに行った陸奥守。
「おまんらぁ、昼餉じゃぁ！」
ひょっこり顔を出す陸奥守。
太陽のように眩しい笑顔も数秒で曇る。
「……え…っ？」
道場は傷一つついてないが、問題は手合わせしてる兄弟。
木刀は遠くに投げられ、マジの拳と拳のぶつけ合い。互いに遠慮も、容赦もない。
正国は目を見開き、悪そうな笑顔で拳を振り下ろす。
清国も穏やかな表情はとっくに消え去り、全力で正国の相手をする。
全力でするもんだから、頬から血が流れ、殴られ蹴られた部分は赤を通り越し青くなっている。
「お、おまんらぁ…？」
陸奥守が再び呼びかけるが反応しない。
「やっぱ木刀じゃつまんねェよなァッ！
兄貴だってそう思うだろッ！？」
「『あぁ…久々に会えたのだ。
腕の一本折れても文句はないだろう…？』」
「俺だって強くなったんだ。そう簡単にくたばんねェよッ！」
物騒な内容を嬉々として話す彼らもやはり武器。
それも実戦刀となれば、「
……いやいや、納得してはいけない。
「わしが止めなきゃいかん。」
そう言って常に懐に忍ばせてる銃を取り出す。
そして、手合わせしてる二振りに当たらないように狙いを定め――――。
「――よぉ、狙って。」
バン、と撃つ。
それは正国と清国の間を通り、道場の壁に穴を開ける。
そして、二振りが一斉にこっちを見る。まるで、「よくも邪魔したな。」と言いたげな殺意まみれの表情。
だが、陸奥守を認識するとその怖い表情はなくなる。
「なんだ、陸奥守かよ。驚かせんじゃねェよ。」
「『まったく……当たったらどうするんですか。』」
「おまんらが言うがか！？
………昼餉の時間じゃぁ。」
呆れたような顔で言うと、同田貫兄弟の表情はパァァと明るくなる。
「よっしゃ、じゃあとっとと飯食うか！」
顎を伝った汗と血を乱暴に拭って大広間に走ろうとする正国の内番服を掴む陸奥守。
「あァ？なんだよ。」
「おまんらはまず手入れじゃ…ほいでから飯じゃ。」
「別に手入れなんていらねェだろ。」
「中傷手前が何言いゆうがか！？
…大広間が血で汚れると、主が悲しむぜよ。」
「主」という言葉に反応する。
ただでさえ出陣で迷惑かけているのに、これ以上手間を増やすわけにはいかない。
「わーったよ、さっさと手入れ部屋行きますよっと。」
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