戻りたければ手を汚せ―同田貫清国編― (ページ2)

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男士高本丸の同田貫清国―顕現― ページ2

今日も主は懲りずに鍛刀していた。
いつかは顕現する刀が出るんじゃないか、その一心で。
だから、本当に驚いた。

昨日の夜、鍛刀のリクエストを忘れていたから鍛刀場には誰も居ないハズなのだ。
なのに、壁に一振りの薙刀が立てかけられている。
その薙刀は、いつかの日に顕現できなかった岩融ではない。
今日の近侍の同田貫正国は、その薙刀を見るとすぐに主を見て言う。

「早く顕現させてくれよ！！」

切羽詰まった声。
焦りと期待が混じった声。

「分かったから、落ちついて。
　その薙刀の刃をあたしに向けてちょうだい。」

主がそう言うと、いつもより軽い足取りで薙刀を手に取り、鞘を抜く。
キラリと光る刃に主は手をかけ、自身の血を伝わせる。

「薙ぎ払え、全てを。
　同田貫の名において。」

久々の言霊に主がビックリする。
そして、桜が舞う。

「『――……私は、同田貫清国。
　同田貫清国作の、しがない薙刀です。』」

金色の目が主と正国を映す。
薙刀は主を認識すると、小さく「…尊崎。」と呟く。
主は近所の知人とあまりにも似すぎな容姿に固まっている。
正国は頭の中を整理してから、震えた声で「兄貴」と呼ぶ。

「兄貴…？
　兄貴、だよなァ？」
「『兄の姿を忘れてしまったのかい？
　私は正真正銘、同田貫清国……の本霊だよ。』」