12 ページ12
そう口にした私は、まっすぐと圭介の目を見る。
“隠してることなんて何もねーよ”って、いつも通り笑って欲しい。
例えそれがウソだとしても、私は信じるから。
心の中で、そう願った。
「…別に」
『……』
人生は、思い通りになんか進まない。
圭介はそう言うと、目線を逸らし頭をガシガシとかく。
圭介の、誤魔化す時の癖。
嘘、下手すぎだよ。
『そ、か…』
そんな圭介を見て、そう返事することしか出来なかった。
「なんでそんなこと聞いたんだよ」
『それは…』
そこまで言いかけて、私は口を閉じる。
“浮気してるの？”なんてここで聞いたら、なんか変わる？
いい方向になんか、変わらないよね。
私はまだ、現実を受け止める勇気がない。
情けないよね、それでも、圭介から離れることが考えられない。
『…いや、なんでもない』
私はそうとだけ言って、その場を離れようとする。
寝室のドアノブに手をかけた時、反対側の腕を掴まれた。
反射的に振り向くと、そこには少し不機嫌そうな顔をする圭介。
「…Aだって、なんか思ってることあんじゃねぇの？」
『え、』
「言わなきゃいけねぇこと、ねぇの？」
なんのことだろう。
浮気のこと聞こうとしてること？
いや、流石に圭介でもそんな自爆するようなこと聞いてこないか。
三ツ谷くんとちょくちょく会ってること？
いや、バレるはずないし三ツ谷くんが言うとも思えない。
全然検討がつかない私は、その場で黙り込む。
そんな私見た圭介は、はぁ、とため息をついた。
「…俺最近、Aがなに考えてんのかわかんねぇ」
最後にそう言い放った圭介。
その言葉を聞いた瞬間、私の中の何かが切れた。
『なに…それ、』
「あ？」
『こっちがどんな思いで毎日過ごしてるか知らないくせに！私の気持ちなんて考えたことないでしょ？いっつも自分勝手！』
「は、おい、落ちつけって…」
『なに？ご機嫌取りですか？私だって圭介がなに考えてるか全然わかんないよ！なんで…なんで…、』
流れてくる涙をぽたぽたと床に垂らしながら、私は圭介に向かってそう怒鳴った。
もう、限界だったのかな。
『圭介なんて…だいっきらい！』
私はそう言って、圭介の手を振り払う。
そのまま思いっきり家を飛び出した。
八つ当たり、なのかな。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1769人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紫陽花(プロフ) - やばいくらい泣きました…！話の長さは長すぎず短すぎずの丁度いい長さなのにこんなにも深い話をかけるみやさん天才ですよ！！！！！ (7月3日 19時) (
レス) id: 5633e8474b (このIDを非表示/違反報告)
きゅーり＠幽霊同盟 - 涙腺と脳味噌が崩壊した…()場地さんかっけぇぇです…新作出たら、絶対読みます。 (2022年5月7日 1時) (レス) @page34 id: 4d158fd0bc (このIDを非表示/違反報告)
mzhama(プロフ) - 原作では泣きましたが場地さんが幸せになってくれるのは嬉しいです。途中涙腺やられました。素敵な小説ありがとうございました (2022年4月16日 19時) (レス) @page34 id: ef4e2691e4 (このIDを非表示/違反報告)
ひちゃん(プロフ) - 場地さん推しの私は最高でした…涙も出ました！ (2021年12月24日 1時) (レス) @page34 id: 587a5d2da1 (このIDを非表示/違反報告)
さやか(プロフ) - 最高でしたー！ (2021年9月26日 15時) (レス) id: 75bd89e55e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：みや
| 作成日時：2021年8月13日 16時
