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『呼、んでないよ、なんで、?』

「なんかお前以外の匂いする」

『…気のせいだよ』




目線を逸らしながらそう答えれば春ちゃんは“ふーん”と言いながら私の顎をグッと掴んだ。

無理矢理にでも目線を合わせ、じーっと怪しむように私から目を離さない。



このままじゃ、バレちゃいそう。

そう思った私は春ちゃんの胸をドンと押し離れる。


ビックした様子の春ちゃんに背を向け寝室に足を運ぶ。





「おいなに逃げてんだテメェ」

『あ、あの仕事で疲れてて!』

「あ゙?」

『とりあえず寝るね!春ちゃんはお風呂入っていいよ!』





そうとだけ言い残して寝室のドアを開けようとすれば春ちゃんはそんな私の手を掴む。


春ちゃんの方を見ればものすごく近い場所にある。

そんな表情には納得行かなそうな不機嫌な顔。





「A、するぞ」

『え、するって…』

「ンなもん決まってんだろ。セッ…」

『言わなくていい!』




なぜこの男は恥ずかしげもなくその単語を言おうとするのか。

反射的にバッと春ちゃんの口の手をやれば、ニヤリと笑って私の指を軽く噛んだ。





『や、め…』

「大人しく抱かれとけよ、Aチャン」

『したく、ないっ、!』

「オラ逃げんな」




そのまま逃げようとする私の腕をグッと引っ張り乱暴に唇を奪う春ちゃん。

近づけば一層香る知らない香水の匂い。

気持ち悪い。


だからといって変に抵抗出来るわけでもなくされるがまま舌を絡ませていれば、春ちゃんは急に唇を離した。




何事かと思ってさっきまで瞑っていた目を開ければ春ちゃんの目線は私の首元。

嫌な予感がした。


なにも言えないままの私に対して春ちゃんは低い声で言う。





「…おいこれ付けたの誰だよ」

『え、っと、』

「誰につけられた」

『別に誰にも…』

「言え」

『…会社の、人』




あまりの圧に転んでつけたとか言う言い訳もすることが出来ず、適当にそう答える。

きっと付けたには竜胆なんだろうけど、そんなこと死んでも言えない。



それから春ちゃんにその人の名前やら関係やらを色々聞かれ、聞き終わったかと思えば家を出て行った。

そしてその人が病院送りになったと聞いたのは、その次の日のことだった。


…ほんとにごめんなさい。





竜胆とはこれっきりにしよう、そのとき心にそう決めた。

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蘭奈莉逢瑠悲@カナリア:ルカ(プロフ) - 春ちゃんさいっこうじゃないですかあああ!!作者様天才すぎる!!! (11月27日 23時) (レス) @page39 id: 4d14879615 (このIDを非表示/違反報告)
一尺八寸一犀 - 春ちゃん〜…あ〜もうすっごい好きです///愛してるってなんですか!?愛してるって!!え、カッコ良過ぎるんだけど!?竜ちゃん蘭ちゃんも素敵でした……///もうずっと読んでいたい╰(*´︶`*)╯♡ (9月4日 23時) (レス) @page39 id: 605bcc3c89 (このIDを非表示/違反報告)
NA - 春ちゃーーーーーん素敵すぎます!最後の''愛してる"カッコイイ☆夢主ちゃんもお幸せに♡ (2023年3月21日 10時) (レス) @page39 id: 9c547ad202 (このIDを非表示/違反報告)
宇治(プロフ) - オールして読みました、ガチ尊い。叫びたいけど時間的に無理だ🥲🥲🥲🥲 (2022年12月25日 5時) (レス) @page39 id: 3e85deed6b (このIDを非表示/違反報告)
やほやほ〜 - 蘭ちゃん=優男 竜胆=ツンデレ神 春千夜=すれ違い彼氏でいい? (2022年9月3日 17時) (レス) @page27 id: 89b4ed43fb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:みや | 作成日時:2021年11月16日 19時

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