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「まったく、何をどうしたらこうなるんだか……。」

いつものように終わりの見えないデスクワークをしていたら、突如としてかけられた出動命令。

その通りに指定の本丸へと飛べば、広がっていたのは美しい春の景趣と、ボロボロの状態で広間に跪く脇差以上の大きさの刀剣男士達、そして、表情を歪ませる彼らを宥める無傷の短刀達という、何とも異様な光景。

「おお、政府の山姥切長義か。」

どう対処すべきかと思考をめぐらせていると、上座から鷹揚な笑い声とともに名を呼ばれた。

「三日月宗近、これは一体どういうことかな?」

「なぁに、無礼への躾よ。気にするな。……ちと足は痺れてきたが。」

「動けないのかい?」

「あぁ、そう命じられたからなぁ。かれこれ数時間はこのままだ。」

よくよく耳を澄ませば、跪いた男士達は口々に足が痛い、痺れた、腰を伸ばしたい等々と訴え、どうやら表情もそれに伴うものらしい。

緊急出動からして、激しい斬り合いにでもなるかと思いきや、肩透かしにも程がある。

そして、命じられたと言う彼の言葉から推測するに、これは言霊だ。それも、仮にも神の末席に坐す刀剣男士を、20名以上拘束して数時間経過しても尚継続する、恐ろしく強力な。

「そう命じた者は?」

「気配が無いところをみるに、帰ったのだろう。」

「帰った? この状態で?」

こんな出動しても何も出来ない状態を作り出しておいて、あまりにも身勝手が過ぎる。

しかし、こんな強力な術を使用できるのは上層部のごく一部。そして彼らは、今日は特に出かけていない。

だとしたら、ここに来たのは誰だ?

「詮索はしない方がいいと思うぜ。」

まるで思考を読んだかのように言い放ったのは、八つ当たりとばかりに畳に拳をぶつけるへし切長谷部の相手をしていた薬研藤四郎だった。

藤色の目が、揺らぐことなくこちらを射抜く。

その手には、見たことの無い1振の脇差。まだまだ付喪神が宿るには到底新しいが、柄や鞘を1目見るだけで使い込まれている事が分かる。

警告するような薬研の言葉に、ざわついていた広間は水を打ったように静まり返り、場にいる全員の視線が彼に注がれる。

「そう言うという事は、君は何か知っているのかな?」

この短刀は、何を隠している。

「俺も詳しい事は知らんが、悪気があっての事じゃあない。それだけは信じてやってくれ。」



「……ひとつだけ聞かせて欲しい。ここに来たのは、何者だ?」

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作者名:セネン@30分クッキングin備中国 | 作者ホームページ:   
作成日時:2021年12月26日 1時

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