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「ですが先輩!」
「いいから。今日は上が休みだから俺が出るしか無いだろ。」
張り詰めた緊張を裂くような落ち着いた声に、
それを見送った八咫は小さく溜め息をつくと、怪訝そうな視線を来訪者に送る。
「後輩がご無礼を。それで、一体何のご用でしょうか? 我々を監査しに来た訳でもないでしょう? 」
「ほう、僕の事も知っているのか。流石だな。あの娘については気にしちゃいないよ、あれが正しい反応だ。」
うははは、と特徴的な笑い方で柔らかな笑みを浮かべた来訪者は、八咫の指示通りパソコンのモニターと睨み合う
「それで用事の方なんだが……、通信システムエラーとやらで送れないらしくてなぁ、直接渡して来いとのことだ、ほれ。」
差し出された封筒を受け取り、中の書面に目を通した八咫の目はすっと細められ、彼が持った紙の端はくしゃりと歪む。
「……明日、上と相談する。」
「ゆっくり考えればいい。とは言っても、僕はその内容を知らないんだがな。返事は3日以内に頼むとの事だ。」
来訪者は、それだけ言い残して部屋を出た。
「──あれ程まで歪な人間が……居るとはなぁ。」
閉ざされた門扉の外、口角を上げてぽそりと呟いた来訪者は淡い金の髪と赤いストールをたなびかせ、人気の無い廊下を上機嫌な様子で歩いて行った。
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作者名:セネン@30分クッキングin備中国 | 作者ホームページ:
作成日時:2021年12月26日 1時