【短編集】誰かと甘いひとときを【仮面ライダー・戦隊】 (ページ43)

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「…イズ、悪い。ちょっと外してくれる？」
「かしこまりました。」

イズは言われた通り部屋を出ていく。
あなたはゆるゆるとイズに手を振っていた。

「どうしてイズちゃんを外したの？わけがあるんでしょ？」
「なぁあなた。」

或人があなたに目線を合わすためにしゃがみこむ。

「冗談じゃなく、ほんとに無理しないでほしいんだよ俺は。会社のために働いてくれるのは、たしかに力になるけど、俺が心配になるほど働いて欲しくないんだよ。」

あなたの体が心配なんだよ、と弱々しく呟く或人。いつもは見せないような或人の姿に、あなたは目を少しだけ見開いた。

「…珍しく君がそう弱気なことをいうのなら、社長命令という形で聞いてあげなくもない。」

或人がぱっと顔を上げる。

「ほんと？」
「ただし、緊急事態は別。私はいつでも飛電のためにこの身を投げ出すからね。」

「じゃあ…あなたにそんなことさせないように、俺は俺でこの会社を守るよ。」

約束、と或人は笑った。昔から変わらない無邪気な笑顔であなたを見つめている。

「うん、約束。お互い破ったら公開キスの刑ね。」
「おう！…おう！？ま、まじで言ってんの！？」

あなたはにっこり笑って「まじ」とだけ答えて、仕事に戻ろうとした。

パソコン画面に戻りかけた椅子がグッと引かれ、或人の顔が迫る。

「ﾁｭ…それ、あんまり罰になんないかも。」
「！？…ば、ばかじゃないの！」

あなたは驚いて、或人を部屋から追い出す。

「おかえりなさいませ、或人社長。…？頬が紅潮していますが、何かあったのですか？」
「んー…ちょ、っとだけ攻め込んでみた。…んだけど…失敗したかもしれない。」

イズは或人の言っている意味がわからず、やはり首をかしげるだけだった。

「もう…！なんなのあいつ！………いつからあんなに男らしくなったのかな…。」

後日談によると、キスの照れ隠しからかあなたは異常なほどのタイピングを見せ、その日の作業進行度は平均の1.5倍ほどだったらしい。