【短編集】誰かと甘いひとときを【仮面ライダー・戦隊】 (ページ38)

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「なんなんだよ、てめぇは！」

見知らぬ男子生徒の手が胸ぐらを掴む。…正確には、掴もうとした。

「おいおい…風都の男が、女に手あげてんじゃねーよ。」
「大丈夫かい？なかなか大見得をきっていたようだけど。」

そこには、帰っていったはずの左翔太郎とフィリップがいた。

「ﾁｯ…左かよ。お前の片割れ、頭おかしいんじゃねーの？」
「当の本人を前にそのセリフが言えるあなたの方が、よほど頭がおかしいかと思いましたが。」

思わず口を挟む。しまった…と思ったが、男たちは言い返すネタが尽きたのか、そそくさと連れ立って帰っていった。

「大丈夫か？あんた。……靴はどうした？」
「さぁ。」

左は「さぁ…ってお前……」と私の反応に呆れている。

「うん、やはり君は非常に興味深い存在だ。ゾクゾクするね。」
「あなたはあなたで、なにを言っているんですか？」

私は、本能的に彼をかばったのは間違いだったかもしれないと思いながら、帰ろうとした。

しかし、フィリップの手が私の腕を掴んで離さない。

「なにか？」
「君は、自分のことに関して悪く言われても、ただの一度も反応することがなかった。なのに僕の話題には一度目で首を突っ込んだ…。なぜだ？」

なぜ、と聞かれても困る。私自身なぜあんな行動に出たのかよくわかっていないのだから。

ただ…。

「よくはわかりませんが、なんとなく、あなたのことを知らない人間があなたのことを悪くいうのは虫酸が走った…というだけです。」

私はそれだけ言って、今度こそ自分の家へと帰路辿った。

「なぁフィリップ、あいつの言ってたことを要約すると、だ。」
「あぁ。…彼女は僕に、自分自身への興味以上の感情、興味を持っているということになるね。」

翔太郎は「お前にもついに春がきたか」なんて言いながら校舎へ戻っていく。おそらくあなたの靴を探すのだろう。

フィリップもあとをついていく。

「翔太郎いわく『失恋は心が痛む』らしいからね。過度な期待をするのはやめておこう。今は、まだ…。」

今はまだ、「また明日」を言い合うくらいの関係がちょうどいい。自分自身のことを理解しようとしなさすぎる彼女との距離感は。