【短編集】誰かと甘いひとときを【仮面ライダー・戦隊】 (ページ23)

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クールと可憐と恋の予兆【欲望/映司】ページ23

「ねぇ、あなた、さっき変身してた人？」

アンクと映司がいつものヤミー退治を終え、クスクシエに戻ろうと歩を進めていると、後ろから声がかけられた。
鈴のように軽やかで小さくころがる声に、思わず映司は反応が遅れた。

「…っあ！え、えっと………見てた？」
「覗き見するつもりは…。」

長い黒髪を風に揺らめかせながら眉を下げる、制服姿の少女。名前はあなたと名乗った。

「ねぇ、先ほどの怪物はなに？ここ最近、頻繁にこの街で見かけるけれど…あなた、何を知ってるの？」

凛とした見た目とは裏腹に物言いはキツかった。
映司は少したじろいで、やんわりとグリードやヤミー、メダルについて話した。

本来、あまり人を巻き込みたくない映司だ。なぜ自ら彼女にこんな危険なことを教えてしまったのか、映司自身も分からなかった。

「なるほど…。だから映司さんがオーズに変身して、街を守ってくれているんですね。…ありがとうございます。先ほどは少しきつい言い方になってしまって、ごめんなさい…。」

話し終えると、あなたは警戒心が薄れたのか、はたまた感謝からくるものか、ニコリと微笑んだ。

映司の中で、何かが反応した。

「あの、映司さんが迷惑でなければ…私もそのヤミー退治に協力させてもらえませんか？自分の街を自分で守れないのは…嫌なんです。」

これがもし比奈だったら、映司は迷わず止めるだろう。危険だから、と。あなたのことも止めようとした。しかし、出来なかった。

あなたがあんまりに真っ直ぐな目で、自分を見てくるから。言葉が出なかった。

「うん…俺も、あなたちゃんが一緒に戦ってくれるの、心強いよ。な、いいだろアンク？」
「あ？………ふん。勝手にしとけ。」

メダル以外のことには無頓着なアンクはテキトーに返事をした。…もしかしたら、映司の心の奥底にまだ秘められた感情を察知してのことかもしれないが。

「この街についてなら詳しいですよ。色々、任せてください。」

「よろしくお願いします」と綺麗なお辞儀を見せるあなたに、映司もまた「あ、こ、こちらこそ…！よろしくお願いします！」とお辞儀してみせた。

あなたはアンクにも挨拶しようと、アンクの後ろを追いかけていく。
その後ろ姿を見て、映司は心がきゅっと締め付けられた。

映司がこの感情の正体に気がつくまで、あともう少しかかりそうだ…。