【短編集】誰かと甘いひとときを【仮面ライダー・戦隊】 (ページ18)

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〇レッスン♯愛の奏【音楽/渡】ページ18

くるみさん、リクエストありがとうございます！

ピンポーン、ピンポーン…。
紅渡の住む大きなお屋敷のチャイムが鳴らされる。
外からでも聞こえるほどドタバタと音を立て、家主が扉を開けた。

「あなたちゃん！待ってたよ。」
「こんにちは、渡さん。今日もよろしくお願いします。」

綺麗なお辞儀をして、あなたは屋敷の中に入っていった。

「えっと、今日はいよいよヴァイオリンを弾いてみるんだったよね。」
「はい。私も…私も渡さんのような綺麗な音を紡ぎたいんです。」

まずはお手本として、渡がいつもの曲を弾いてみせる。いつもより丁寧に、一音一音に気を使って、まるでヴァイオリンが親友であるかのように弾きあげた。
思わずあなたは拍手する。

「やっぱり、いつ聞いても渡さんのヴァイオリンはすごいです…！」
「あなたちゃんは才能があるから、きっとすぐに僕なんて追い越すよ。」

渡は照れたように、「さぁ、練習しよう！」とあなたにヴァイオリンを構えさせた。
楽譜と弦を交互に見ながら、あなたは唸る。

「こう…、いや、ちょっと違うかな…んー…こう？…違うなぁ…。渡さん、いまいちここのフレーズが上手くいきません…。」
「あぁ、そこ、少し難しいよね。えっと、こんな感じで弾いてみて…。」

渡の弾く姿を見よう見まねであなたもやってみるが、ちっとも上手くいかない。

「なんででしょう…。」
「あなたちゃん、少し肩の力を抜いてみて。それから、もうちょっと斜めにこう構えて…。」

そう言いながら、渡はあなたの背に回って、あなたを包み込む形でヴァイオリンの構えを教えた。

「なるほど…たしかにさっきよりも遥かに弾きやすいです。さすが渡さん！！」

バッと振り返ったあなたの顔の近さに、渡はいま自分がしていることを理解した。…あなたもまた然りである。

「わわわわわわわ！！ご、ごめんなさい！！僕、全然、そんなつもりじゃなくて！！！」
「いや、私の方こそ、すみません！渡さんは教えてくださってるだけなのに！」

教えてくれているだけ、と自分で言ったくせに、悲しくなってくるあなた。

「あ、あの…。また、明日も来てもいいですか…？」
「…もちろんですよ。今日の続き、教えます。」

まだまだ師弟関係から抜け出せる気配はないけれど。
いつかは、ヴァイオリンも、恋の試練も、上手くこなしてみせる。そう、密かに心に決めたあなたなのであった。