【短編集】誰かと甘いひとときを【仮面ライダー・戦隊】 (ページ11)

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家に帰ろうとも思えなくて、だらだらと街を歩いていたら、いつの間にか陽は落ちていた。

「はぁ…これから、どうしていこうかな…。」

医者に行く気はない。行ったところで意味がないのは、私自身よくわかっていることだから。

「もういっそのこと、全然知らない土地まで旅をしてみようか…。」
「そいつは困るな。」

1番聞きたくて、1番聞きたくない声が後ろから聞こえる。
行先は誰にも、私自身にも言ってないのに、なんでこんな所で巡り会っちゃうかな。

「俺の手の内から離れられるのは困る。あんまり遠いと、俺も探しにこれねぇぞ。」
「…はは。そりゃいいね。次の目的地、沖縄か北海道にしようかな。」

彼の方が見れない。だって、どんな顔して見ればいい？何も言わずに出てきたっていうのに。

「バカ言うな。」

後ろから、暖かさを感じた。もう随分と昔に感じることを諦めてしまった、人の…彼の温もり。
私はいま、花家大我に抱きしめられている…？

「…キャラじゃないんじゃない？」
「お前のせいでな。」

耳元からいつもより優しげな、大好きな声が聞こえる。

やめてよ。せっかく覚悟決めてきたのに。こんなの。

「泣いちゃうじゃん。」
「泣くなら、俺の目が届くところで泣け。」

そんな言葉を聞いて、止まってくれるような薄情な涙ではない。今まで全然平気だったのに、ストッパーが壊れたみたいに止まらない。

「お前の病気は、俺が治してやる。」
「無理だよ…。だって私の病気は…。」
「あぁ、お前の病気がなんなのか、この前やっとわかった。」

私は驚いて大我の方を振り返った。真っ黒で吸い込まれそうな瞳とばっちり視線がぶつかる。

「けどな、困ったことに俺もお前と同じ病気にかかっちまってなぁ。」
「え、え…？うそ…。」

だって私と同じってことは…。

「お前じゃねぇと、俺の病気は治りそうにないんだよ。お前の病気、治してやる。その代わり、俺のも治せよ？あなた。」

「言われなくたって、すぐにでも治してあげる。」

その夜、2人の病気は治って、いつもの見慣れた廃病院で、前とはちょっと違う生活を送るようになりましたとさ。

Love Sickness=恋わずらい