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人通りが少ないベンチに、ため息をつき座り込んでいた。
『 あの、佐倉さん…だったよね。 こんにちは…! 』
「 えっ…あっ…ごめ、なさ…! … 」
逃げようとする彼女を声で呼び止める。
『 あ、あの話したいことがあって…! 』
それでも逃げようとする彼女に、僕はあきらめず、手をつかむ。
「 や、はなして、! … 」
『 離さないよ! だって今日、佐倉さん元気なさそうにしてたから…。 』
「 っ…!!!、別に、そんなことは…。 」
警戒した声や小刻みに揺れている手のひらに僕はそっと両手を乗せた。
『 僕は、白瀬 A 。いきなりごめんね、じゃぁさ、少しでいいからお話しない? 』
「 ぁ、…わか、…りました…。 」
彼女は俯き、そう答えた。
『 高校生活さ、びっくりさせられること多いよね。 』
「 あ、…はい…。 」
心なしか、まだ手が震えているのがわかる。
『 この前プールの授業があったときさ、うえで見学してたよね? 』
コクリとうなずいてくれた。
「 わた、し、あんまり、人前で、肌見せるの、すきじゃなくて、… 」
『 そっかぁ…僕も実はそうなんだよね。 』
「 そ、そうなんですか? 」
『 うん、足くらいはせっかくの授業だから、
つけたくて上のほうにジャージは羽織ってたんだけどさ、実はほら、この背中んとこ…。』
制服をたくし上げ、指をさす。
「 …っ!それ、…。、」
『 そう、大やけどの跡…。本当はこれを見られたくなくて、入らなかったんだ。』
「 …そう、だったんですね… 」
『 佐倉さんに初めて見せた。 学校の人に(笑)』
さて…、彼女は、同情してくれるだろうか。
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作者名:匿名希望 | 作成日時:2022年10月10日 23時