大脱獄【東海オンエア】

虫眼鏡さん ページ15

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「…ごめんね、疲れさせちゃった」
「いえいえ、てつやさんは有名なんで仕方ないですよ」

二人分の焼きそばを買って、人がいっぱいの商店街を抜け出した。
なんとか人のいなさそうな細い道にたどり着いた。
てつやさんはたくさんの人に声をかけられていて、時間がかかったけど。
そんなこと全然気にならない。
今のてつやさんはきっと、私を見ているんだから。

「お面つけたままじゃ食べれませんね笑」
「もう人いないから取っていいのに笑」

てつやさんは私のお面を外した。
２秒くらい目が合う。

「ずっとAちゃんの顔見れなかったからなんか久しぶり笑」

てつやさんの顔が少し赤くなったのが可愛らしい。
なんだか気恥ずかしくなって、黙々と焼きそばを食べ始めた。

「てつや」
「…げっ…、虫さん…」
「今日の夜この前の動画の続き１本だけ撮るって言ってたじゃん」

いきなり目の前に現れたのは、私より背が少し高いくらいの眼鏡をかけた男性だった。
その"虫さん"という人は会話を聞いている限り東海オンエアのメンバーっぽい。
軽く会釈をする。

「なにが"なんか久しぶり"だよ気持ち悪い笑」
「そこも見てたのかよ」
「もしかしたら祭り行ってんじゃねって話になって代表して僕が見に来たの！今てつやん家でとしみつ達待ってるんだから」
「じゃあ行くか…でも、Aちゃんは？」
「わ、私は…帰りますね！」
「えぇえ」
「ごめんね、うちのてつやが」

虫眼鏡さんはなんだか良い人そうで、さっきのてつやさんに向けていた険しい顔とは違い、優しい顔で言ってくれた。
もう少してつやさんといたかったけど。
また今度にしよう。

「ごめんね、こんな暗いのに１人で帰らせて」
「大丈夫です、家近いんで」
「ほんとごめんね、また明日俺ん家来てくれる？」
「…行きます！」

明日もてつやさんに会えることが嬉しくて、今日のことなんてどうでもよくなった。
このバイキンマンのお面もてつやさんとの思い出だな。
そっとバイキンマンのお面を撫でた。



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