Agreement ．【完結】

4.名前アンド名前な名前 ページ5

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世良先生に検査機械の使い方を教えて、
患者さんの回診を終わらせてから医局に戻って









自分の席でパソコンをパチパチと打っていると
渡海先生が仮眠室から出てきた









「A、これも」

「えっ⋯ハイ⋯」









渡海先生から、
渋々書類の束とタブレットを受け取ってデスクの端に置く









渡海先生は、また仮眠室の方に背中を丸めて歩いていって
仮眠室のドアがパタンと閉まった









朝から色々頼まれたからなのか
頭の中で、渡海先生の声が響く









そういえば、何故私だけ下の名前で呼ばれるのか
慣れたけど、ふとした時に気になったりする









これも多分、何年か前のこと
私がこの病院に来た時のこと









『⋯春海(はるみ)A？お前、どっちも名前みたいで変』

『⋯えっ？』








胸元の名札をじぃーっと見られて、
これが渡海先生に、1番最初に言われた言葉










『春海とA、どっちで呼ばれたい？』

『⋯え⋯春海でいいです。普通に⋯名字で』

『あっそう。じゃ、よろしくA』









それだけ言って、クク、って肩で笑いながら
遠ざかっていく渡海先生を、未だに忘れない









「⋯ほんとに、分かんない先生だなー⋯」









私の独り言が、医局に響いて消えた。









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