Agreement ．【完結】

30.予想外の優しい言葉 ページ31

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「⋯え、」









少し口が開くと、また唇は塞がれて
啄(ついば)むように、キスされる









至近距離で、渡海先生の瞳に捕えられる
私の目を、捕らえて離さない









「⋯⋯とかいせんせ、⋯」

「お前さあ、カン違いし過ぎだろ」

「⋯あの、」

「俺をなんだと思ってんの」









渡海先生はため息を吐くと、
私の顔にかかった前髪を避けて、また目が合わせられた









「俺はお前のこと、金払ってくれる人間とか全然腕のない外科医とか、最初から思ってねーよ」

「⋯え、」









渡海先生の予想外の言葉に、
嬉しくて、頭が回らなくて、ついてきてくれない









「わたし⋯今回のオペ失敗したら、渡海先生に辞表書かされて⋯もう東城大にも、渡海先生の近くにもいれないって思って⋯っ」

「辞表なんて書かせるわけないだろ」

「でも⋯っ、渡海先生いつも他の先生にそうやってきたから⋯っ」

「辞表書かせるも何も、お前は出来るって最初っから知ってた」









止まったはずの涙が、
また勝手にぽろぽろ零れてくる









色んな感情がごちゃごちゃに混ざって
もう何が理由で泣いてるのか分からなくなる









渡海先生は、溢れる涙を指で優しく拭ってくれて
渡海先生の顔も、いつもより優しかった









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