貴方には、復讐したい人はいますか？

疑問 ページ23

…つい昨日の事だ。

この復讐屋に、依頼以外の用で少女が入ってきた。緑髪の、華奢な女の子。

ここ復讐屋で働きたい、なんてほざいていた。



…一目見ただけで彼女は異様だった。

ここに入ってこれるという事は、相当な¨恨み¨と¨復讐心¨を持っているという事だ。

それがどういう事かと言えば、¨ここに入ってこれる人間は最早人間ではない¨という事。

負の感情に飲み込まれ、生気を、正気を失って。復讐以外にもう生き甲斐がないような……。


そんな存在しか立ち入れない復讐屋に、彼女はやってきた。

何故ここに来れたのか、と聞きたくなる程、彼女は純粋だった。復讐なんて考えなさそうだった。


「…なんて俺も思っていたけど」


それは大きな間違いだ。


彼女を騙して試したあの時…。この俺のナイフを奪って、刃をこちらに向けてきた時のあの彼女の顔と言ったら……


大層楽しそうな顔だった。

敵意や殺意も混ざった顔だったが、それでも楽しそうな、静かな狂気を感じる顔。


俺が言うのもおかしいと思うけれど、


「…狂ってるよ、あの子は。ここに来れたんだから、やっぱり」


…だが、彼女は何故わざわざここに来たのだろうか。働かせてくれと言ってきた理由も分からないが…

彼女は間違いなく、¨自分で殺せる¨筈なのに。

彼女にとっての復讐が「殺し」なのか、それ以外なのか分からないが、憎いと思ってる相手に自分で仕返しできる実力を、強さを、彼女は持っているだろうに。



そもそも¨あれ¨は「俺の気配に気づいて振り向く」ぐらいで合格の筈だった。

わざとあれだけの気配や殺気を放ってから飛びかかって、何も気付かないで呑気に歩いてるのであれば、そんな奴に復讐屋の仕事など務まる訳がない、そのまま殺してやろうと思っていたのだ。


あろうことか、彼女は完全に気配に気付いていて、振り向くどころかナイフを奪われて反撃されかけたけれど。


……あれは俺も驚きだった。予想以上に感覚が鋭い人間だことで。

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