【煉獄杏寿郎】貴方が死なない未来。 (ページ9)

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夜が過ぎ、朝を迎えようとしていた。
ずっと岩を押しているが、拳一つ分も動いていない。

手は既にボロボロになり、血がダラダラと流れている。
痛いし疲れたし、お腹も空いた。
もう辞めてしまいたくなっている自分がいる。

「杏寿郎の…ッためッ」

再び岩に全体重をかける。
唇を噛み締めていると、口の中に血の味が広がった。

「まだ終わってねぇのかよー」

後ろから急に声が聞こえて、思わずばっと振り返る。
足音も何も聞こえなかったのに…!!

「てかお前何歳？」

「十歳、です」

「まだ十歳なのかよ！妙にちっさいと思ったわー」

師匠はそう言うと、あ、と声を漏らす。

「そういえばお前、呼吸教えたっけ」

「いえ、まだです」

「ふーん」

師匠は興味無さげに鼻を鳴らすと、私にズイッと顔を近付けてきた。
驚いて「ひッ」と声を上げる。

「お前、誰？」
「え、雪ぞ…」
「名前じゃねぇよ」

一体何を…
意味がわからない、と眉を顰めると、師匠はそれを察したのか察していないのか、再び話し始めた。

「喋る鴉寄越しても驚かねぇし、呼吸のことも知ってるみてぇだ。それに、初めて俺を見た時すぐに"こいつは鬼殺隊だ"と判断した。普通、変な服きたおっさんだくらいにしか思わねぇだろ」

「あ…」

「家族が鬼に殺された訳でも、知り合いに鬼殺隊がいる訳でもねぇんだろ？何故お前は鬼殺隊になろうと思った。どこで鬼殺隊のことを知った」

私は困り果てて、何も言うことが出来なくなっていた。
だって、師匠に今までの事を話したって、信じてくれるとは思えないから。
どうすれば良いんだろう。
どうすれば…

そんな私の様子を見た師匠はため息をついた。

「別に責めようってんじゃねぇよ。ただ気になっただけだ。勝手に詮索して悪かったな」

彼はそう言うと、私の首根っこを掴んでポイと家の敷地の外に出す。

「今日はもう家に帰れ。親に心配はかけるもんじゃねぇ。明日また来いよ」

「…ありがとうございます」

この人には敵わない。
立ち上がって両手を見ると、もう血豆が出来ていた。

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