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「ごめんなさいね、見苦しい姿を見せてしまって」


ひとしきり涙を流した女の人は、少しだけスッキリした顔でそう言った。
それでも、無理に笑っているのは一目瞭然で。


「私こそ、あのようなことを聞いてしまい申し訳ありませんでした」


そう謝ることしか出来なかった。
お子さんが行方不明になってしまった直後にあんなことを聞かれては、誰だって泣いてしまうだろう。


「一週間前、夜に家を抜け出したみたいで…ずっと夫が探しているのだけれど、まだ見つからないの。確か、呉服屋の三上さんの家の子もそうだって…」


その女の人は、ぽつりぽつりとそう語りだした。
ぎゅっと着物の裾を握りしめる彼女が目を伏せる。


「そういえば、昔からこの村で子どもが行方不明になることが多いって聞いたことがあるわ。全く信じてなかったのだけれど…」

「昔から?」

「はい、この村には"鬼"がいるって。ただの迷信なんですけどね」

「鬼?」


鬼。
その言葉を聞いた瞬間、思わず反応してしまう。
やはりこの村のどこかに鬼が…


「…私はもう行きます。ありがとうございました」


一度女の人に頭を下げ、立ち上がる。

鬼がいるのだったら、あまりゆっくりもしていられない。


「あの!良かったら、またいらしてくださいね」

「はい、また来ます」


一度ふりかえってそう返事をしてから、私は早足で歩き出した。




『昔から、この村で子どもは行方不明になることが多い』

『夜中に自ら家を抜け出したみたい』

『この村には、鬼がいるって…』



鬼が活動出来る夜に、子どもは家を抜け出した。
一体なんのために?

それも、昔から子どもはいなくなっている。


考え込みながら、しばらく村を歩いていた。


「やーい、小太郎の弱虫ー!」

「悔しかったら"肝試し"してみろよー!」


声が聞こえてふと横の空き地に目を向けると、二人の男の子が一人の男の子をはやし立てていた。

少しだけ気分が悪くなる。
本当に、どうして男の子はこうなんだろう…


「嫌だよ!あそこには"鬼"が出るんだ!ばぁちゃんが言ってたもん!」

「"鬼"なんていねーよ!」


その言葉に、思わず足を止めた。

もしかして…!


「その話、詳しく聞かせて」


男の子の一人の肩を掴み、そう尋ねる。


ようやくこの村の実態が、姿を見せ始めた。



*→←第四章



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みーた(プロフ) - 麗羽さん» 泣かないでぇ(´;ω;`) (2019年10月12日 21時) (レス) id: 8487e33076 (このIDを非表示/違反報告)
麗羽(プロフ) - 普通に泣きました……( ;∀;) (2019年10月12日 13時) (レス) id: 835b4d5769 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃ(プロフ) - みーたさん» ありがとうございます! (2019年10月12日 12時) (レス) id: 483e5f8c50 (このIDを非表示/違反報告)
みーた(プロフ) - ちぃさん» 申し訳ございませんでした!すぐにルビをふってまいりますので少々お待ちください! (2019年10月11日 22時) (レス) id: 8487e33076 (このIDを非表示/違反報告)
みーた(プロフ) - おさるさん» ありがとうございます!更新頑張ります! (2019年10月11日 22時) (レス) id: 8487e33076 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:みーた x他1人 | 作成日時:2019年9月29日 20時

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