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〜A〜
「伊織さんは良い執事ですよね」
伊織「良い、とは?」
「だって紅葉ちゃんのこと、給料発生源と見ないですよね?」
伊織「ええ。それはもちろん……え?」
やっぱり拓真がおかしいんだよね、執事として
いや、いいんだよ
素直は美徳だと言うし
ただなぁ……他の執事を見てると私の感覚が麻痺してる気がする
コナン「同じ執事として伊織さんは拓真さんのこと、どう思う」
伊織「数える程しか会ったことがないので詳しいことは分かりませんが、彼はどこか他人を拒絶している節が見受けられます」
コナン「悪い人に……見えたりはしない?」
伊織「私から見た彼は、矢河に対してのみ、とても誠実かと」
引かれた線を飛び越えることもなく、その手前で立ち往生する
こちらから何かを問えば、用意された理由のように「お金のため」と答える
面倒で厄介なのが、それが嘘でないこと
だからこっちも、それ以上は踏み込めない
元太「ふぅ。食った食った。けどよ、あれっぽっちじゃ腹は膨れねぇよ」
光彦「晩ご飯もあるんですから、あれで丁度ですよ。何言ってるんですか元太くん」
「あ!ごめん和葉ちゃん、服部くん。帰りの時間、大丈夫!?」
思ってたよりも店に長居してしまったせいで、外は暗い
子供だけで新幹線に乗せるのは心配だ
私が付き添えればいいんだけど余裕がない
園子「ねぇ。伊織さんは大人じゃないの?」
蘭「和葉ちゃんと紅葉ちゃんの仲が悪いから気を遣っているのかも」
園子「あ、なるほどね」
どうしたらいいか悩んでいると、スーツの男性が話しかけてきた
榊原「大阪までなら僕が送ろうか?」
会話を盗み聞き……は、仕方ないと思う
周りに聞こえる声量だったし
そこで無視せず話しかけてくるだけでなく、送るなんてちょっと怖い
みんなの言う警戒とか危機管理とかって、こういうことでしょ?
榊原「ごめんごめん。怪しい者じゃないよ。こういう者です」
差し出された名刺に書かれていた会社名には見覚えがある
榊原「ついでに君とも矢河の屋敷で会ったことがあるんだよ。ほら、数年前、不動産事業で意見を求められたとき」
「あの、ときの……?」
大人が数人、頭を抱えていた案件があったな
何の知識もない、ただ廊下を歩いていた私にお声がかかった
言われたらこの人もいたような、いなかったような
人懐っこい笑顔を浮かべる人だし、印象的ではある
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作者名:まゆ | 作成日時:2024年1月30日 8時