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なんだか胸騒ぎがした。私たちに与えられた任務は潜入任務。二時間前に彼がわざわざ連絡をいれたのは、敵を見つけたからでは…？まさか彼が私を敵から遠ざけようとしていたのではないかと、そんなことを考えてしまう。当たらないでほしい予感を胸に車を飛ばして、最初の待ち合わせ場所に向かう。…敵のアジトはすぐそこだ。
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場所はいかにも敵が潜伏しやすいような廃墟だった。私もまた割れた窓からの侵入を試みる。物音一つ立てずに侵入した建物内は薄らと外の光で照らされており奥は真っ暗。他者よりも良い耳だけを頼りに、人の気配を察して進む。
彼を見つけるのは想像以上に簡単であった。廃墟の最奥部の椅子に座らせられ、顔を腫らせたのは見間違うはずもない大先生だ。リーダー格の男が何かを大先生に問い詰めている様子に、息を殺して耳を澄ませる。
「…そろそろ吐け。居るんだろう。お前の仲間に、Aって女がよ。」
急に自分の名前が呼ばれ物陰からそっと顔を出す。彼の前に立っていた男はどこかで見た装いをしていた。
「そりゃあ俺は女の子の名前忘れたことないけど、聞く相手間違えとるよ」
「ンな訳…ねぇだろ！！」
顔を紅葉にした男が唾を撒き散らせながら怒声をあげる。
「あの夜、今でも忘れねぇよ…あの女に同胞は殺された。俺はかろうじて残った意識の中であの女と共に地獄へ堕ちることだけを望んでいたのに…お前が助けたんだろうがァ！」
「…ふーん。君、あの時の残賊か」
「貴様…ッ」
男が拳を振り下ろす。鈍い音が廃墟に響く。
「残念ながらあの子は自由に旅立った。もう俺の手の中にはおらんよ」
へらへらと笑った彼はいつもと同じ声のトーンだった。痛みとか苦しみとか…そういった類を一切見せることはなく、殴られた反動で血が出たって変わらない。白黒つけなくては気が済まない私と相対する、一色では表すことできない彼が、私を守っていることに気付いて、泣きたい気持ちになってきた。
いつもいつも彼はそうだった。自分では否定しているが、彼は己を擦り減らして他者に与える、そんな人だった。
彼は、死にたい顔をしているんじゃない。いつ死んでもいいように笑っている。あの顔は、私と出会ったあの日から変わらない。幸せを手に入れたいと、そんなことを嘆きながら本気でそれを望んでいない人。
「なら、貴様を殺すだけだ」
「はは、痛いのはやめてぇな」
男が武器を持ち数人で彼を囲んだ。同時に───私も駆け出した。
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野々宮蓮花(プロフ) - 唐揚げさん» こんにちは。コメントありがとうございます！そう言って頂けてなによりです。まだまだ沢山の作品が続きますので、引き続き楽しんで頂けたら幸いと存じます。どうぞよろしくお願いします！ (2021年1月25日 20時) (
レス) id: 720637d64b (このIDを非表示/違反報告)
唐揚げ(プロフ) - どの作品も少しドキドキ？しながら読ませていただきました。ut先生オンリーということで似たような作品が並ぶのかなぁと思いましたが、バリエーション豊かで楽しかったです。 (2021年1月25日 19時) (レス) id: 6975836a4f (このIDを非表示/違反報告)
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