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「……これは？」
視線を少し彷徨わせた俺は、先程のアネモネを指さし彼女に訊ねた。
「……ああ。唯の、売れ残りですよ」
そう答えた彼女は寂しそうで、一輪だけ軒先に取り残されたそれとどこか似ていて。困ったように眉を下げてこちらを見返す彼女に思わず手を伸ばした。
「ど、どうしました……？」
「あ……すみません。えっと、あの、これ、貰ってもいいっすか」
誤魔化すようにそう言えば、彼女は顔を綻ばせた。
「ふふ、もちろんですよ」
300円です、と手袋を嵌めた彼女がその花を手に取った。外の明かりに照らされた彼女は瞬きすれば消えてしまいそうな、そんな感覚を覚える。
「お仕事お疲れ様です」
「え？」
「あ、すみません。すごくぼーっとしてらっしゃるから、お疲れなのかなあって」
「ああ……ありがとうございます」
手際よく包まれていく花をまたぼんやりと見つめていると、彼女が口を開く。
「アネモネには茎のところに毒がありますから。触れる時には素手で触らないように気をつけてくださいね」
小銭と引き換えに受け取ったそれは、行き場が見つかってどこか嬉しそうにさえ見える。手渡される時に彼女の胸元にある名札に視線を向けた。黒字に金の彫りで「宮貫」と刻まれたそれをしっかりと記憶する。
「ありがとうございました」
店先まで見送りに来た彼女はぺこりと頭を下げる。いつもの俺なら、ただ会釈をするだけで帰っていただろう。これは気まぐれか、また別の何かか。
「また来ます」
そう言えば彼女は少し驚いて、それから花が開くように笑みを浮かべた。
「……お待ちしてます！」
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野々宮蓮花(プロフ) - 唐揚げさん» こんにちは。コメントありがとうございます！そう言って頂けてなによりです。まだまだ沢山の作品が続きますので、引き続き楽しんで頂けたら幸いと存じます。どうぞよろしくお願いします！ (2021年1月25日 20時) (
レス) id: 720637d64b (このIDを非表示/違反報告)
唐揚げ(プロフ) - どの作品も少しドキドキ？しながら読ませていただきました。ut先生オンリーということで似たような作品が並ぶのかなぁと思いましたが、バリエーション豊かで楽しかったです。 (2021年1月25日 19時) (レス) id: 6975836a4f (このIDを非表示/違反報告)
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