十六話【桜吹雪に消ゆる矢羽】 ページ16
桜舞う日。
彼女もついに社会人か、となんとなく感慨深い気持ちになりながら校門で彼女を待つ。
暫くすると見慣れた黒髪に赤のリボンを揺らした彼女の姿。
「…大ちゃん」
「卒業おめでと」
矢絣柄の袴に編み上げのショートブーツ。それに赤のリボン。
前に理想のスタイルは聞いていたが、黒髪に映えてよく似合っている。
「はいからさんやろ？それ。よう似合うてるわ」
「ふふ、ありがと。良く気付いたね」
「前に言うてたやん」
「あれ。そうだっけ？」
驚いたように言う彼女の笑顔が眩しい。
袴で出歩かせるのは宜しくないだろう、とお茶に誘う。
近くのコーヒーチェーンに入ると、彼女が注文したのはルイボスティー。普段カフェラテだとか、普通の紅茶を頼んでいた彼女にしては珍しい。
「あれ？珍しいな。ルイボスティーとか飲むんや」
「最近ブーム来てるの」
「へー。美味いん？」
「…まぁ。それなりに？」
なんとなく、濁されたような。
そんな違和感は弾む会話にかき消されていった。
お祝いのご飯はまた後日誘おう。卒業と入社祝いを兼ねて何か送ろうか。なんて考えながら彼女と家路につく。
彼女の住むマンションの前に着き、向かい合う。
「卒業おめでとう。おやすみ、またな」
「…ありがとう。じゃあね」
そう言ってくるりと背を向けた彼女は、どこか悲しそうで。今にも泣きそうな表情をしていた。
ふわりと舞った桜の壁が、1歩踏み出した俺を遮る。
引き留めようと伸ばした手は、届かない。
"さようなら"
彼女はちいさく呟いた、気がした。
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野々宮蓮花(プロフ) - 114514さん» わ〜〜！！！嬉しいお言葉、ありがとうございます…！こちらも読んでくださってありがとうございます…！比翼連理合わせてこそ…と思って書いておりましたので、こちらにも触れていただけて本当に嬉しいです。こちらこそ、ありがとうございました…！ (2020年9月16日 22時) (
レス) id: 720637d64b (このIDを非表示/違反報告)
114514(プロフ) - 前作にとても惹かれて連理の方も読ませて頂きました…前作では見えなかった彼の想いが繊細にリアルに書かれていて重ねて読むことで尚更胸の奥を抉られるような切なさがありました…凄く好きなシリーズです。素敵な話をありがとうございます… (2020年9月16日 20時) (レス) id: 8149499a76 (このIDを非表示/違反報告)
野々宮蓮花(プロフ) - すみれいんさん» 2作共にお読みくださりありがとうございます！！まさにそれを狙っていたので、そう言ってくださってとても嬉しいです…；；本当にありがとうございました！ (2020年7月9日 22時) (レス) id: 720637d64b (このIDを非表示/違反報告)
すみれいん(プロフ) - めちゃくちゃ良かったです。飛べない方では先生の心情？内心？か分からなかったのでまさかこのお話でわかるとは…と思いながら読ませていただきました！この時こんな感じやったんや…なるほど…となっておりました！完結おめでとうございます◯¬！ (2020年7月9日 22時) (レス) id: a715f4eb82 (このIDを非表示/違反報告)
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