Gib mir einen Kuss.─5 ページ17
ym side
講義後、もう用のない大学でふらふら歩いていると、薮ちゃんが友達らしき人と喋っているのが見えた。
俺が薮ちゃんを襲ったとき、駆けつけに来た人だ。
名前は確か……伊野尾慧、といったっけ。
薮ちゃんは彼を信頼しているのかもしれないけれど、俺は信じてもいいのか疑っている。
__だってあの時、彼は気づいてた。
俺が薮ちゃんのシャツを剥ぎ、あのシルシを見つけるまで、彼は立ち尽くしていた。
……いや違う。
立ち尽くしていたんじゃなかった。
そのシルシを見たいが為に、狙っていたみたいに、その時を待っていたように見えた。
「其奴は危険だ、薮ちゃん」
小声でそう呟くと、聞こえたのか想いが通じたのか、薮ちゃんがこちらを振り向いた。
最近避けられてきたから、ちょっぴり嬉しい。
yb「涼介、今日一緒に帰らない?」
「えっ?」
嘘、なんで!?
yb「伊野尾がまだ次の時間もあるからさ、待てなくって」
あの人の代わりでもいい。
二人きりになるチャンスが巡ってきた。
「嬉しい!」
こうして大学を出てみたものの、話は一向に弾まず……。
左上の小さな顔を捉えると、それだけで顔が熱くなった。
なに緊張してんだ、俺。
yb「なぁ涼介」
人気の少ない裏道に出た所で、向こうが先に口を開いた。
「なぁに、薮ちゃん」
yb「白鳥の輩なのに、あのシルシが気になるんだな」
「……え?」
反射的に固まった足。
少し前で止まった薮ちゃんは微笑んでいるだけ。
yb「白鳥組の一人息子だろ?ちゃんとしろよ。涼介が日下杜組に近付こうとしてたのは前々から気づいてたよ」
「なっ、なんで」
yb「俺は繋がってるから。そっちのヤツと」
それだけ言うと何事もなかったかのように歩き出した。
「待って!それは規定違反だろ!?」
yb「そんな規定誰が作った?少しの間、下っ端の口封じに使ってた謳い文句みたいなもんだよ」
「それでも!……誰と?」
yb「言うかバカ」
「じゃあ俺らだけの秘密!」
睨みを利かせて見つめられた。
「……ね?」
こんなんで怯んだら、白鳥の名が廃る。
最早意地で耐えた。
yb「お前だって、繋がってる」
「……へ?」
俺が、繋がってるだって?
そんなことはない。
俺が、そんな間違いを犯すはずがない。
yb「分からないのか?……まぁいいよ。一つだけ調べてほしいことがある」
「なに?」
yb「“知念侑李”という子の借金のことで、ちょっと」
.
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柊(プロフ) - みるみるみるきーさん» コメントありがとうございます!!!まさかまさか、みるみるさん(私が勝手にそう呼んでいます。すみません)からコメントを戴く日が来ることになるとは……!騒いでいただけるなんて、感激です!早く更新します!ありがとうございます!頑張ります! (2020年9月13日 23時) (レス) id: 9a230f5c32 (このIDを非表示/違反報告)
みるみるみるきー(プロフ) - 初めまして。《ミントな君に祝杯を》をから一気読みしてしまいました。いろんな人がいろんな形で絡んでいて、え?あら?そーなの?うわー!と、ひとり騒がしくしながら読み進んでいました。更新、楽しみにしています。 (2020年9月12日 19時) (レス) id: a47283bf22 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柊 | 作成日時:2019年6月16日 15時