ポップコーンが食べたい─5 ページ11
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『蜂』は俺より先にこの家を出た。
俺と一緒にいるところを今更だが見られては困る、というなんとも警戒心のない理由だったが、それは俺の所為でもあるから黙っておいた。
hk「高木おせぇよ。今すぐ組長んとこ行ってこい」
いつもより場がピリピリしている。
それもそうか。
『蜂』は俺の前にここに来てるんだから。
初めて見た奴らにとっては存在感も雰囲気も格上の相手だろうから。
「……光くんは、怯えないんだ」
hk「なんか言ったか?」
「なんでも。ありがとね、連絡してくれて」
なんだかんだでいいヤツなんだ、光くんは。
流石と言ってはなんだが、彼は『蜂』に対しても物怖じしないらしい。
「失礼します」
組長、お呼びでしょうか。
お呼びもなにもないだろう、と心中でほくそ笑みながら組長の前で背を正す。
今は有岡くんも伊野尾くんも、『蜂』もいない。
この緊迫した状態でなにを聞かれるかは、自ずと分かってくるものだ。
「……聞くな。答えろ」
やっぱり、そう来たか。
「……白鳥組は、『蜂』を殺そうとしています。組長がどうお思いかは存じ上げませんが、『彼』がいなくなるとこの組の損害も大きいかと」
「そうか」
「……というより、怒らないのですね。勝手に抜け出しても」
「抜け出してはいけないなんてルール、誰も作ってはいない。お前が自身で立てた決まりのようなものじゃないか」
「そうでした」
一つ、この機会に質問したいことがあった。
実際には聞きたいことが山程あるのだが、野暮なことも多いから絞ったのだ。
「一つ。よろしいでしょうか」
「なんだ?」
「伊野尾慧。彼、俺がここにいた時もいたのですね。気づきませんでした」
「そうだろうな。お前が幹部だった当時、まだ入りたてだったから。お前が眼中になかったのも頷ける」
まさか四年の間に幹部が変わっていたとは驚きました。
有岡だけだと思っていたので。
「あいつは四年目で幹部になった。つい最近だ」
「凄いですね」
「お前はたった二年だ。この差は大きい」
自分のことかのようにベラベラと俺を褒める組長。
お前に褒められても嬉しくねぇよ、って言ってやりたいのをグッと堪える。
俺らが七年かけて積み上げてきたものをたった一言で崩すわけにはいかない。
「……ありがとうございます」
「お前をここに戻したいのだがな。手筈は調ってある」
「……はい」
俺はまだ、この状況を楽しみたいんだけどな。
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柊(プロフ) - みるみるみるきーさん» コメントありがとうございます!!!まさかまさか、みるみるさん(私が勝手にそう呼んでいます。すみません)からコメントを戴く日が来ることになるとは……!騒いでいただけるなんて、感激です!早く更新します!ありがとうございます!頑張ります! (2020年9月13日 23時) (レス) id: 9a230f5c32 (このIDを非表示/違反報告)
みるみるみるきー(プロフ) - 初めまして。《ミントな君に祝杯を》をから一気読みしてしまいました。いろんな人がいろんな形で絡んでいて、え?あら?そーなの?うわー!と、ひとり騒がしくしながら読み進んでいました。更新、楽しみにしています。 (2020年9月12日 19時) (レス) id: a47283bf22 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柊 | 作成日時:2019年6月16日 15時