夜風を連れて ページ17
久し振りにお酒を沢山飲んでしまった。
あくびが出てしまうし身体がだるいけれど、タクシーもすぐには見当たらない。
「A。」
駅前まで歩いてみようかと考えを巡らせていたら、よく知っている声が私を呼ぶ。
「南雲君。」
「何処に行くの、酔っ払い。」
確かにいつもよりは沢山飲んだけれどそんなに酔ってはいない。
少なくとも幹事として職場のみんなを先に送り出し、会費から支払いを済ませ、忘れ物の確認をしてお店にお礼を言えるくらいはきちんとしている。
別にそんなに酔っていない。
「素面のときのAは酔っていないと説明するためにそんなにぺらぺら喋らない。」
良いから乗りなさい、と促され、彼の車の助手席に私はおさまった。
「幹事だからあまり飲まないって言ってなかった。」
「んー、うちの課の新入社員が部長に絡まれちゃって飲まされてたから、多少のフォローを」
そう、お疲れ様でした。と彼は短く返事をする。
運転中の横顔は時々人工的な灯りに照らされて色が変わっていくから、表情はあまり見て取れない。
「迎えに来てくれたの。ありがとうね。」
ここだって言ったっけ、と訊ねたら、聞いたよ。やっぱり酔って忘れてるじゃない。と溜め息交じりに笑っていた。
息を漏らすような笑い声を聞くと何とも言えない浮ついた気持ちになって、やっぱり酔っているのかも知れないと漠然と考えた。
「見過ぎじゃない、心配しなくてもちゃんと家まで送るよ。」
「心配なんてしてないよ、南雲君に見とれてたの。」
そう応えると少し苦い顔をして、
「普段そんなこと言わないくせに。質の悪い酔っ払いだな。」
という。
普段から、伝えているつもりだけれど。
身体の何処かがふわりと揺れて、上手く返事が出来なかった。
「寝てていいよ。」
「南雲君がいるのにもったいない。」
「また、そういうことを、」
いつも涼しい顔をした彼が少し悔しそうにして見えたのは、気の所為ではないと思いたい。
「送って帰るつもりだったけれど、泊めてくれる。」
「良いけど、明日仕事じゃないの。」
すっかりいつもの表情に戻った彼は
「間に合うように帰るよ。それとも、寝かせてくれないつもりなの。」
と余裕たっぷりに笑った。
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沢崎(プロフ) - KANONさん» はじめまして。読んで頂いてありがとうございます。書きたい場面は色々ありますが、文字に起こすのが難しくて。お言葉が励みになりました!木林さんの素敵さを少しでも表現したいです^^ (2018年4月27日 3時) (レス) id: a5bf5d2b75 (このIDを非表示/違反報告)
KANON - はじめまして。木林さんのお話が読めて嬉しいです。不思議な怪しい魅力を持つ木林さん。何度も読み返してしまいます。これからも素敵なお話が続きますように‥ (2018年4月25日 0時) (レス) id: 1ebeb777d3 (このIDを非表示/違反報告)
沢崎(プロフ) - りこさん» はじめまして、コメント有難うございます!私も放送が終わっても木林さんのことを考えたくて書いています。イメージとかけ離れてしまわないか表現を迷っているので木林さんファンの方からそのようなお言葉を頂けて本当に嬉しいです。ぜひまたいらして下さいね^^ (2018年4月7日 2時) (レス) id: a5bf5d2b75 (このIDを非表示/違反報告)
りこ - はじめまして。ドラマ終了後も木林さんが頭から離れず、沢崎さんのお話に出会えた時は本当に震えました。毎作品、読み終えるのが勿体なくて、ゆっくりゆっくり読ませて頂いています。言葉選びがとても綺麗でこの喜びを250字では語り切れません。有り難うこざいます。 (2018年4月4日 23時) (レス) id: 27c3e3ee96 (このIDを非表示/違反報告)
沢崎(プロフ) - さくらさん» 訪問及びコメント、ありがとうございます!言葉の表現や情景は練っているつもりなので、とても嬉しいお言葉です^^また遊びに来て頂けると嬉しいです(´―`* (2018年4月2日 23時) (レス) id: a5bf5d2b75 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:沢崎 | 作成日時:2018年3月22日 22時