iridescent clouds

Nothing is certain but... ページ15

会社として重要な業務の一つだとは認識しているが、どうにも興が乗らない。
次期社長候補なのだからこういったことにも携わるように、と体よく押し付けられた感も否めなかった。

木林は溜め息を吐いて、キーボードを叩く。
同業だとあまりにも内容が似通ってしまうだろう。
他の参考材料を探そうと、思い当たった企業名を打ち込んで検索する。

「あれ。」

カチカチと切り替わる画面の途中手が止まり、人の少なくなったオフィスでほのかな感嘆の声が漏れた。



――――――――――――



「医療現場には様々な課題があります。的確な提案で携わるお客様と解決に取り組むことは、その向こうにいる患者の皆さんへの」

不意に言葉を投げかけると、目の前の恋人は言い終わる前に目を見開いた。
そこには明らかに動揺の色が窺え、想像していた通りの反応に木林は満足する。

「どうして．．．」
「おかげ様でとても参考になりました。弊社のリクルートサイト作成にあたって、色々と。」


来期の採用情報webページの準備を始めなければならなかった。
勤務する従業員は概ね葬儀社としての業務を執り行っており、人事部門の専従担当者はあまり多くない。
次期社長候補なのだから次世代で共に働く仲間を一緒に探しましょう等と圧倒的に人手不足の担当者から泣きつかれ、断りきれなくなった。

思い当たった企業の採用情報ページに何か参考になる特徴はないかと調べていたとき、[先輩社員の声]という項目の下にA Aと掲載され、恋人が微笑んでいるのを見付けたのだった。
追い打ちを掛けるようにスマートフォンに映し出された画像を見せると、肌がさっと紅色に染まる。

「やだー、やめてー」
「なんで、A綺麗に撮れてるのに」
「それは、プロの方の手によるもので、」

後生だからお許しください、とテーブルに突っ伏す姿が可笑しくて、思わず笑い声をあげてしまった。


「まぁ、見付かってしまったものは税金だとでも思って納めて頂いて」
「そんな税金聞いたことないよ．．．」


はぁ、と深く溜め息を吐く彼女に、「俺だったらAのこともっと綺麗に撮れるよ。」と出来るだけ甘く囁いて、からかってしまったことへの詫言になることを期待した。

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