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浅からぬ御縁_001 ページ1

諸手続のためオフィスに立ち寄ろうとひどく明るいUDIの廊下を歩くと、間もなく交流会がどうかといった愉しげな女性の声が聞こえてくる。
挨拶をしておこうかとそちらを眺めると、日頃ここでは見掛けない、けれども見馴れた姿を認めた。

「こんにちは、東海林さん。―Aさんも。奇遇ですね、今日はこちらでしたか。」

彼女は「あ。」と少しだけ驚いた顔を見せたのち、「こんにちは。」と笑みを濃くする。

「あれっ、お二人お知り合いなの?」
東海林さんが興味深げに声を弾ませ、この方はいつも朗らかで結構なことだな、などと考えた。

「ええ。彼女とは浅からぬ御縁がございまして。」
意図的に意味ありげな表情を作って見せると、
「えっ、ちょっと何何、意味深じゃなーい。」
と、こちらよりやや変化の判りやすい彼女の表情を窺おうとする。

「仕事柄、他のお取引先でもお会いする機会がございまして。」
「なんだそれだけかー…。あ、そろそろ戻らないと。じゃ、Aさんさっきの件ご検討よろしくお願いします。」

手をひらひらとさせて立ち去る東海林さんを見送ると、残された彼女は僅かに抗議の色を含んだ視線をこちらに寄越す。

「浅からぬ、御縁。」

仕事の場でああいう言い方をしたことを指摘したいらしい。

「何か、お気に障ってしまいましたか。―嘘は言っていない。」

こちらは知られてしまっても一向に構わないのだ。
少し強い口調を交ぜると、意図を汲んだ様に眉尻を下げて見せる。

「仕事柄他のお取引先でも会っているじゃない。私も、嘘は言っていない。」

曰く、医療機器営業担当と葬儀屋が懇意にしているというのは、戴けないと感じる人もいるのではないかということ。
とはいえ。

「そこまで他人行儀にされると。私はAさんに仕事中、合法的にお会い出来て嬉しかったのですよ。」
「合法的って・・・。私も南雲君と会えて、あ。」

極まりが悪そうに木林さん、と小声で言い直す。
可愛い、と言ったらもっと動揺するだろうか。

悪戯心を飲み込んで、
「分かっている。目が合ったとき、笑ってくれた。」
と応えると、Aは気恥ずかしそうにバインダーで顔を隠してしまうのだった。

浅からぬ御縁_002→



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設定タグ:アンナチュラル , 木林南雲 , 夢小説   
作品ジャンル:恋愛
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沢崎(プロフ) - KANONさん» はじめまして。読んで頂いてありがとうございます。書きたい場面は色々ありますが、文字に起こすのが難しくて。お言葉が励みになりました!木林さんの素敵さを少しでも表現したいです^^ (2018年4月27日 3時) (レス) id: a5bf5d2b75 (このIDを非表示/違反報告)
KANON - はじめまして。木林さんのお話が読めて嬉しいです。不思議な怪しい魅力を持つ木林さん。何度も読み返してしまいます。これからも素敵なお話が続きますように‥ (2018年4月25日 0時) (レス) id: 1ebeb777d3 (このIDを非表示/違反報告)
沢崎(プロフ) - りこさん» はじめまして、コメント有難うございます!私も放送が終わっても木林さんのことを考えたくて書いています。イメージとかけ離れてしまわないか表現を迷っているので木林さんファンの方からそのようなお言葉を頂けて本当に嬉しいです。ぜひまたいらして下さいね^^ (2018年4月7日 2時) (レス) id: a5bf5d2b75 (このIDを非表示/違反報告)
りこ - はじめまして。ドラマ終了後も木林さんが頭から離れず、沢崎さんのお話に出会えた時は本当に震えました。毎作品、読み終えるのが勿体なくて、ゆっくりゆっくり読ませて頂いています。言葉選びがとても綺麗でこの喜びを250字では語り切れません。有り難うこざいます。 (2018年4月4日 23時) (レス) id: 27c3e3ee96 (このIDを非表示/違反報告)
沢崎(プロフ) - さくらさん» 訪問及びコメント、ありがとうございます!言葉の表現や情景は練っているつもりなので、とても嬉しいお言葉です^^また遊びに来て頂けると嬉しいです(´―`* (2018年4月2日 23時) (レス) id: a5bf5d2b75 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:沢崎 | 作成日時:2018年3月22日 22時

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