Time goes by ３

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秋も深まってきた今日この頃。

いつもと変わらない日常に、
波風が立った。


昼過ぎに、
勤務先の美術館に、
見知らぬ女の人が私を訪ねて来たの。

優しそうな穏やかな雰囲気の人。


片桐春奈さん。

年齢は、30代半ばくらいかな。

名刺の肩書は、
アートコンサルタントっていう、
摩訶不思議なものだったけど、

誠実そうな笑顔に、
警戒心がほぐれる。


「Aさん、個展、開いてみませんか？」


突然の提案に、すごく驚いた。

実は画家デビューした数年前は、
何度か声かけてもらったことあるんだけど、

作品数もまだ多くなくて、断ってた。


賞を獲った当時は、
若かったこともあって、
それなりに話題にもなったけど、

今は鳴かず飛ばずのパッとしない画家の私に、
どうして声なんてかけてくれたんだろう。


片桐さんに、
昔出た、アート雑誌を差し出された。


「この絵を見て、
私の探してたのは、この人だって思ったの。
この受賞作はもう売却してしまいましたよね？」


「・・・はい」


憧れ。


あの絵は、神山くんの部屋にあった。

まだ持っててくれてるのかは、知らないけど・・・


嬉しかったな。


「ぜひ前向きに考えてみてもらえませんか？
会場などは全てこちらで手配しますし、
Aさんは何もしなくても大丈夫ですから」


「あの、でも・・・」


「ご心配なのは費用の方ですよね？
スポンサーはこちらで、
もう目星がついていますので。
Aさんには一部だけを負担して頂く事になりますが、大した額にはなりません。
宣伝の方もこちらで大々的に打たせて頂きますので、
個展で絵が売れれば、
すぐにお返し出来ると思いますよ」


結構押しが強い。

さっきまで苗字で呼んでたのに、
もう名前呼び。

詳しい設計書とやらを渡されてしまった。


石渡館長が、その設計書を熟読してる。


「東京で個展。
チャンスやと思うけどなあ」


「でも不安です」


「不安がってたら前に進まれへんやんか。
若いねんから、
何事にも積極的にいかんと。
Aさんてほんま、
若いのに覇気いうか、
根性がないよなあ」


館長は私のことを、
消極的でつまらない人間だと思ってるらしくて、

しょっちゅう、そういうことを言われる。


「すいません・・・」

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