Time goes by ３

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最後の最後んなって。

やっと病院に顔出した。


そん時な、神崎さん、言うてくれてん。


「智の信じた道を行けばええからな。
間違いでも、
信じて進め。
もがいて足掻いてるうちに、
いつか、それが正解になってるはずや」


俺さ。

素直に受け止められへんかって。


「そんなん嘘や。
間違いは間違いのまんまや。
俺はもう汚れたし、
二度とあの頃の自分には戻られへん」


ぼろぼろ泣いてもうてんな。


神崎さん、無理のきかへん身体で、
俺の肩、抱いてくれた。

あの時の温もり。


きっと一生、忘れることはない。


その後、すぐ、神崎オーナーは息を引き取った。


俺んとって、ほんまに大切な人やのに。

二度と、会われへん・・・


あの日のこと、思い出してしもて、

しばらく、ぼんやりしてた。


Aの、


「ふわふわにするコツ。
もう今なら企業秘密じゃないよね？
教えて？」


その言葉にはっとなる。


「忘れた」


「そんなわけないじゃん」


「忘れたもんは忘れてん。
しつこいねん」


メレンゲ入れるねん、て、

言うてあげればええだけやのに。


冷たくせな思うあまり、
意固地になってもうてる。


それにさ・・・

あのパンケーキには、
嫌な印象がついてもうてるねん。


俺が作ったパンケーキ、
Aはいつも美味しい美味しい言うて、
頬張るくせに、

途中で食べ切られへんなって。

最後、必ず、彼氏のシゲが手伝うねんな。


あの様子、嫉妬心で、吐きそうんなって、見てたから。


俺、子供みたいやな。


しばらくAが黙ってるから。

さすがに心が苦しなってきた。


散々、傷付けてきてんし、今更やけど。


謝ろか迷ってたら・・・


「苺、もーらい」


タルトの上の苺、一個、掠め取られてん。

ほんま早技やった。


「お前っ。
ほんま、なんやねんな」


「酸っぱい！甘い！美味しい！」


きゃあきゃあ、はしゃいでさ。

嬉しそうな顔して。


俺もつられて笑顔になってまいそうで、怖い。


Aが、どうしても、好きやねん。

めっちゃ好き。


ほんまは今すぐ、抱きしめたい。


抱きしめるだけや足りひん。


昨夜みたいに、キスしたい。


あほやな、俺。

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